khurata’s blog

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ラスト・ヴァンパイア (ホイットリー・ストリーバー・著、山田順子・訳)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 ディテール描写の筆致は巧みながら、主人公のヴァンパイアが「人間をはるかに凌ぐ知性を持つ」にもかかわらず死体をそのまま残して立ち去るという、「ヴァンパイアの鉄則」破りの大失態を犯してしまう点は、どうしても釈然としない。 そりゃ滅亡するだろうよ、と思ってしまう凡ミスなのだ。

 こういう描写でキャラクター設定の一角を崩してしまうと、ヴァンパイアに怖れを持つことも難しくなってしまう。 人間なら、どんなに優秀な人物であってもごくまれには考えられないようなミスをするだろうけれども、知性と肉体で人類を軽く上回る「強靱で完璧な存在」がイージーミスをすると、どうにも釈然としないまま物語を読み進めなければならなくなってしまう。 いったんこうなると、精緻なディテール描写も、著者の単なる知識自慢にすら見えてきてしまう。

 また、主人公の刑事の怪我治りの異常な早さについて、誰も重大な関心を持たないという点もかなり不自然である。