khurata’s blog

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ゼレンスキー氏の残念さ

 ウクライナとロシアの戦争に関して、日本国としては北方領土の件があるので、ロシア側に立つ事は出来ないし、ウクライナの領土回復に向けて努力していくしかない。

 しかし、現地時間2月28日に行われたトランプ米大統領とゼレンスキー宇大統領の直接会談は、ゼ氏が失敗したと私には見える。

 

 繰り返すが、日本国と日本国民はウクライナの側に立つ。 もちろん私も含めて。 クリミア半島に関しては当時のウクライナ政権の失敗も大きいので外野がとやかく言うのは難しいが、少なくとも2022年2月以降にロシアが軍事力で奪った土地は、ウクライナに返還されるべきだと私は考える。

 北方領土の事を考えれば、我が国は軍事力による現状変更を認めるわけにはいかない。 この事情は米国もよく承知しているはずである。 だからゼ氏が上手くやれば、停戦、および、領土回復までの段階の最初の部分について、米国の強大な力を貸してもらうことはできたと思うのだ。

(ト氏が当初そのつもりであったかどうかは知る由もないが、わざわざホワイトハウスに招いた以上は、ウクライナに対してそれなりの対応をするつもりであったろうことは想像しても許されるのではないか)

 

 しかし会談に臨んだゼ氏の態様については、大きく2つの点で残念なところがあった。

 

 まずひとつは、あくまで助力をたのむ側であるのに、過去3年間にわたり巨大な支援をしてくれた相手国の大統領に対して、背広姿ですらなかった事だ。

 ゼ氏は国連でもどこでも「戦時下体制の姿」で現れるし、それがトレードマークみたいになっていることはわかる。 しかし、だからこそ、ここぞという時に正装すれば、相手(今回は米国大統領)にも「本気度」を汲み取ってもらう事ができたと思うのだ。

 「いつもの姿」で現れたゼ氏に対して、相手は「この人は我々を『いつもの相手』だと思っている」と考えるのではないか。 それはウクライナ大統領としては、あまりに計算に欠けた、損な姿勢だったと思う。

 

 もうひとつ、ゼ氏はウクライナ語、ロシア語、英語を操る、見事な語学力を持っているが、とはいえ、母語でない英語で、米国記者に囲まれた場においてト氏や米国首脳と渡り合うのは、やはり不利だったろう。

 もし日本国が似たような窮地に陥り、米国大統領に直接面会を乞うならば、英語が堪能な首相であったとしても通訳を立てただろう。

 ゼ氏が、もし通訳を立てて話をしていたら、ト氏だってあんな剣幕でまくし立てる事はできなかったのではないか。 この点は非常に残念に思う。

 

 この会談において、ト氏が言っていた事は、米国の側から見れば正しい。 その意味で、ト氏はまさしく米国のトップである。

 人命や建物の損耗を考えれば、何よりもまず停戦すべきで、その後の事は停戦してから考えればよい。 そもそもウクライナの安全保障は、まずは独力で、ついで周辺の欧州諸国とロシアが共同して担うべき課題ではないかと私は思う。

 

 ウクライナという国は、場所柄、非常に同情すべきところだ。 ロシアからはEUやNATOへの壁として使われ、EUからはロシアへの壁として使われる。 だから独立後の歴代政権は、親露と親欧米で「たすきがけ」のように交替し、双方の間の壁として、東欧地域の安定に大きく寄与してきた。

 そのウクライナを助けないという選択はない。 しかし米国には、米軍の血を流してまでウクライナを守る義理がないし、仮にそうすれば米露の軍事対立になってしまう。

 残る道は、EUや日本がどれだけ本気で取り組めるかにかかっているだろう。 米国への説得も含めて。

(了)

当たってほしくない予想

 ロシアが北朝鮮から兵力を借りて、早くも幾日か経つ。

 ロシアの領土拡大戦争、と言うべきか、あるいはロシアの領土復興闘争と言うべきか、何にせよ、プーチンは、おのれの生きているうちに、「虐げられた東ウクライナのロシア語話者を救い出す」という大義を為したいのだろうと思える。

 そのために北朝鮮に借りを作った格好になるのだが、今まではロシアが核やミサイル技術などでほぼ一方的に北朝鮮に貸しを作っていたので、それを精算するという意味合いは有るだろう。

 

 しかし今回の借りは人命だ。 技術と引き換えにするには不釣り合いだ。

 もし、北朝鮮から兵を借りたロシアが東ウクライナ併合を成し遂げたならば、その後は、返礼として、北朝鮮の南進にロシアが兵力を融通する、という事も考え得る。

 ロシアに北朝鮮が兵を貸して東ウクライナを併合する、そして、北朝鮮にロシアが兵を貸して韓国を併合する……これは取引として釣り合いが取れている。

 

 さらに、もしかすると、その動きに合わせて、中国は台湾を併合しに動くかも知れない。 そこまでしなくても、北朝鮮とロシアが韓国を攻撃する事態を、中国は止めないだろう。

 もしそうなれば、日本が戦火に巻き込まれるのは避けられまい。

 

 おそらくウクライナとロシアの戦争は、ロシア有利のまま終止符が打たれ、停戦条約が締結され、東ウクライナはロシア領となるのだろう。 ウクライナにしても、EU諸国にしても、これ以上の人身と戦費を浪費したくはあるまい。 この時期にトランプがNATO加盟のための費用負担増を匂わせるのも、戦禍を拡大させまいという思惑なのではなかろうか。

 

 そういう前例が作られたならば、朝鮮半島で似た事が起きても、ちっとも不思議ではない。 北朝鮮が南進し、ロシアがそれを助け、ソウルが陥落した時点で停戦し、ソウルを含む韓国北部を北朝鮮領とする。 そうすれば金正恩は、国民に対して体制の素晴らしさを大いに説く事が出来るだろう。

 

 今の韓国の政治的混乱は、北朝鮮に付け入る隙を与えるのみ。 韓国は迅速に政治体制を復旧すべきだと考える。

『チ。』を観る前に

はじめに

 漫画『チ。』が、2024年10月からテレビアニメ化される。 私はとても楽しみにしているが、中世から近世にかけての西欧において、地動説は人間が命と生涯を懸けて獲得した学説だった事を、放映前にざっとおさらいしてみたい。 科学を貫いた人達のドラマが、そこにはある。

 

古代ギリシャ時代

 ピタゴラス派は、地動説を主張していた。 対してアリストテレスらは天動説を支持した。 すでに恒星(いつも同じ場所にある)と惑星(日によって場所が違う)と太陽と月は区別されていたが、当時の天体観測は未熟だったため、地動説と天動説のどちらが正しいという確証は得られなかった。

 

西暦120年頃

 惑星の動きは長らく謎だった。 一定の方向に動いていたかと思いきや、ある日から逆方向に動きはじめ、数日すると、また元の方向に動いてゆくのだ(逆行)。 そのため「惑」う星と呼ばれるようになった。 英語の planet はギリシャ語の planetai(「さまよう人」、「放浪者」の意)を語源としている。

 プトレマイオスは、精密な計算と大胆な仮定を採用することにより、天球の面を円運動する惑星の軌道理論を完成させ、ここに天動説が確立された(※1)。

 万学の祖・アリストテレスが支持し、多才・プトレマイオスが「証明」したことにより、この後1千年以上にわたって天動説は「定説」となり、西欧のキリスト教的世界観にも強く浸透した。

 

西暦1543年

 この年、コペルニクスが著した『天球の回転について』が出版された。 これは、太陽と惑星の運動にまつわる当時の知見を網羅し、再構築した書物である。 その結果として、プトレマイオス天動説が不自然に複雑で、地動説ならスッキリしていることが示唆されていたが(地球も惑星ならば、惑星逆行は「当然」の現象であり、説明する必要自体が無くなる)、コペルニクスは出版して間もなく世を去ってしまった。

 

西暦1609年

 肉眼による精密な天体観測を続けたティコ・ブラーエは、観測で得られた膨大なデータをケプラーに託した。 その観測データから、ケプラーは以下の2法則を見出した。

  • 第1の法則……惑星の軌道は楕円である
  • 第2の法則……惑星の公転速度は、太陽に近いほど速い(※2)

 第1法則からして、当時の西欧世界では考えられない常識破りの説だった。 この宇宙は神が創りたもうたのだから、すべてが完全なはずであり、惑星の軌道も完全な円である、と考えられていたからだ。 これだけでケプラーは火あぶりにされたかも知れないほど「危険」な説だ。

 ただ、ケプラーは、これらの法則を「発見」はしたものの、なぜそうなるのかは解明できなかった。

 なお、ガリレイはこの年に人類史上初の「望遠鏡による天体観測」を行っている。

 

西暦1618年

 さらなる観測データ解析を続けたケプラーは、新しい法則を見出した。

  • 第3の法則……惑星の公転周期の2乗と、楕円軌道の長半径の3乗との比率は等しい(※3)

 しかし、この法則もまた、ケプラーは理由を解明できなかった。 解析した結果としては正しいと確信していたはずだし、だから発表したのだろうが、こうなっている理由までは分からなかった。

 ただ、ケプラーは上記3法則から「太陽は『距離の2乗に反比例する、磁力のような見えない力』で惑星を引っ張っている」と気付き、地動説の真実にかなり迫っていた。 地球も「ケプラーの法則にしたがう惑星」のひとつであるとすれば、惑星逆行を含め、惑星の運動はすべてスッキリと説明できる……そうなれば、精密ではあるけれど複雑怪奇な天動説は、説得力を失うだろう。

 

西暦1630年

 ケプラー死去。

 

西暦1682年

 巨大な彗星が現れた。 ハレーは、これを観測し詳細に記録した1人である。

 

西暦1687年

 ニュートン万有引力説を出版した。 あらゆるものの間に引力という「見えない力」が働いて、全ての質量は引っ張り合い、その力は距離の2乗に反比例する、という説だった。

 ニュートンの力学はガリレイの力学を拡張するものとなり、その後20世紀にアインシュタインが現れるまで、世界を説明する力学として200年以上も科学界に君臨し続けた。

 

西暦1705年

 ハレーが、次の巨大彗星は1758年に再び現れると「予言」した。

 ハレーは西暦1456年、1531年、1607年にも彗星が飛来していた事を知り、1682年の巨大彗星もこれと同じものではないかと考えた。 自らが観測した巨大彗星の軌道が、万有引力説にのっとっていると仮定して計算したところ、この巨大彗星はケプラーの法則にしたがう楕円軌道で太陽を回り、「次」は1758年に現れるという結論に達した。

 言い換えると、ケプラーの法則万有引力説によって説明できることを、ハレーは計算によって見出したのだ。 もしハレーの「予言」が当たれば、ケプラーの法則の裏にはニュートン力学が在り、地球も惑星のひとつである、すなわち地動説こそが真実に近い、と証明することになる。

 

西暦1727年

 ニュートン死去。

 

西暦1741年

 ハレー死去。

 

西暦1758年

 ハレーの「予言」した軌道を通る巨大彗星が出現した。 ハレーの予言は見事に成就し、実証された。 すなわち、

  • 万有引力説は世界を説明できる妥当な説である
  • ケプラーの法則万有引力説から導出され、万有引力のもとでは正しい
  • 惑星以外にも太陽を周回する天体が存在する
  • 未知の惑星や、太陽を周回する未知の天体は、ケプラーの法則によって予見・発見できる
  • 過去と未来の惑星の位置も計算可能である

などの事柄が同時に示され、1500年の長きにわたって信奉されたプトレマイオスの天動説は、ついに葬られた。

 数ある彗星のなかで、この巨大彗星は周期彗星番号「1」の栄誉を与えられ、ハレーの名が冠された。

 

おわりに

 現代の我々は、地球が太陽の周りを回っていることを、当たり前だと思っている。

 しかし、コペルニクスも、ケプラーも、ガリレイも、ハレーも、ニュートンも、これら偉大な学者たちは、誰ひとりとして、地動説の「勝利」を見ず、天動説が支配する世界で死んでいった。 彼らは、自ら観測し計算して得たそれぞれの地動説を、後世の誰かが引き継ぎ、新しい説を継ぎ足して強めてくれる事を信じていたと思いたい。

 コペルニクスが地動説の支持を表明してから、ハレーの予言が成就するまで200年以上の間、偉大な人物たちが、地動説を受け継ぎ、より強く育てていった……そこに私は人間と科学への希望、科学のドラマと熱いロマンを見る。 漫画・アニメの題材として、まことにうってつけであろう。

 

脚注

※1:天動説は、結果的には誤っていたが、しかしそれでも、「当時の」知見から得られた科学であった事を、私は疑わない。 科学はつねに仮説である……その時に使える知見と技術によって得られる仮説である。 時代が進み、新しい仮説が実証されれば、科学は進歩してゆく。 だから「後になってみれば誤りと分かる『古い』説」の存在は大切であり、最新科学だけでなく科学史も大切なのだ。

※2:より詳らかに言えば、「ある単位時間における、惑星の運行曲線の始点と終点、それらと太陽を結ぶ扇形の面積は、どの時期においても等しい」。 万有引力のもとで角運動量は保存される、ということだが、ニュートン以前には、これが分からなかった。

※3:たとえば金星の公転周期は約0.62年(地球年)で、金星と太陽の最長距離は約0.72天文単位である(太陽と地球の間は1)。 0.62の2乗=0.38は、0.72の3乗=0.37と、ほぼ等しい。

(了)

DELL Precision T5810 の起動ドライブを NVMe 化した記

1.はじめに

 ウチで使っているメイン PC「DELL Precision T5810(以降「T5810」と書く)」は、Intel Core 第4世代(Haswell)の古いマシンだが、先日、ふと気になって SSD 寿命を見てみたら、なんと「残りゼロ」になっていた。 CHKDSK を実行しても問題は見つからず、実際に使っていても問題は無いのだが、なるべく早めに取り替えなければならない。 こんな古いマシンに追加投資する気は無かったが致し方ない。

 起動ドライブは Crucial CT500MX500SSD1 という 500GB の SATA SSD だったので、同型品か、より大容量の SATA SSD に取り替えるのが「最も手っ取り早く、謎も無い」のだが、M.2 端子の NVMe SSD の方が SATA SSD よりもはるかに速いし、今や容量単価も安い。

 T5810 は、初期出荷仕様では NVMe が使えないマシンだったが、2015年の BIOS アップデートで NVMe が公式にサポートされ、DELL から PCIe-M.2 変換ボードも発売された。

 海外のブログでは、実際に T5810 を NVMe SSD から起動している例も見られる一方、海外のサポート系サイトを見ると、うまくできず教えを請うている人も散見される。 簡単には行かないのかも知れないが、よしんば失敗したとしても、購入したハードを売るか、次のマシンで使えば無駄にはならないだろう。

 というようなわけで NVMe SSD からの Windows 10 起動を試み、成功したので、それを記録として残しておく。 意外と日本語の記事が少ないので、「古いマシンを NVMe 起動にしたい」と考える方々の参考にもなる……かも知れない。

 

2.NVMe ドライブから OS 起動するための必要条件

 以下の3条件が必要だ。

  1. NVMe ドライブが PC に接続できる(NVMe M.2 スロットが存在)
  2. BIOSUEFI をサポートしている
  3. UEFI が NVMe をサポートしている

1.T5810 には M.2 スロットが無いのだが、ウチの場合 PCIe Gen.3 スロットは空いていたので、そこに変換ボードを差して NVMe M.2 スロットとする。 何はどうあれ、物理的につながらなくては話にならない。

2.UEFI をサポートしないレガシー BIOS では NVMe ドライブを使えないので、そのようなマシンでは NVMe ドライブの内蔵化はハードルが高い(※1)。 幸い T5810 の BIOSUEFI をサポートしているので(見た目はレガシー BIOS のようではあるが)、この点は問題ない。

3.UEFI が NVMe をサポートしていない場合でも、Windows 7 以降の Windows には NVMe デバイスドライバーが存在するので、Windows が起動しさえすれば NVMe ドライブをデータドライブとして使うことはできる(起動ドライブとしては使えないが※2)。
 起動ドライブとして使うには、当然のことながら、UEFI BIOS が NVMe をサポートしている必要がある。 T5810 の BIOS は、初期には NVMe に対応していなかったが、バージョン A08(2015/08/25)からサポートされた(※3)。 なお2024年8月時点の最新バージョンは A34 である。

 

3.今回 NVMe 化したマシンや機材について

 ウチの T5810 は次のような構成であった。

BIOS:ver. A34 (2020/11/17)

CPU:Intel Xeon E5-1620 v3

memory:SK Hynix HMA41GR7MFR8N-TF x4 = 32GB

PCI slot:
    slot1    PCIe 3.0 x8        (free)
    slot2    PCIe 3.0 x16    Quadro K2200
    slot3    PCIe 2.0 x1        (free)
    slot4    PCIe 3.0 x16      (free)
    slot5    PCIe 2.0 x4        (free)
    slot6    PCI 2.3 32bit    Sound BLASTER X-Fi Xtreme Gamer SB-XFI-XG

SATA drives:
 SATA-ODD0    HL-DT-ST (DVD CD-R/RW, DVD-R/RW/+R/+RW/RAM/+R DL)
 SATA-ODD1    (free)
 SATA-HDD0 Crucial CT500MX500SSD1 (SSD 500GB)
 SATA-HDD1 WDC WD60EZRZ (HDD 6TB)
 SATA-HDD2 WDC WD40EZRZ (HDD 4TB)
 SATA-HDD3 WDC WD80EAZZ (HDD 8TB)

 新しく使う SSD については、現状の 500GB だと残り容量が半分未満で、これは SSD としては良くない状況であるため(SSD残容量が少ないほど短命になると言われ、半分以上の容量を残して使うのが望ましいらしい)、ネット上の評判を加味して Crucial CT1000P3PSSD8JP を選択した。 現用と異なる容量のドライブを選ぶと、作業中の区別が容易になるという利点もある。

 引き続き Crucial を選択した理由は、クローンが簡単に出来そうだったからだ。 「べき論」を言えば、起動ドライブを換装したら OS クリーンインストールが望ましいが、今回は「SSD 寿命問題に速攻で対応する」のが目的なので、楽にクローンできることを重視した。

 T5810 の PCIe は Gen.3 なので、Gen.4 対応の CT1000P3PSSD8JP はオーバースペックであり、Gen.3 対応の CT1000P3SSD8JP の方が発熱も少ないのだが、なぜか CT1000P3SSD8JP の方が少し高価で、しかも入手しづらかった。

 PCIe-M.2 アダプターについては、DELL 純正も有るのだが、海外ブログの記述を見ると「純正品は100米ドルくらいするが、7米ドル程度の安いもので充分、自分は12米ドルの製品を使っている」という助言があったので、AREA SD-PE4M2-B を選択した。

 M.2 SSD は冷却が大事だ。 AREA SD-PE4M2-B にもヒートシンクは付属しているが、もうちょっとだけ良さそうなものを付けたいと思い、ainex BA-HM02 も購入した。

Fig.1:購入した CT1000P3PSSD8JP、SD-PE4M2-B、BA-HM02

 

 

4.作業手順の概略

 詳細は後にくだくだ書き残すので、ここでは「実際に成功した手順」を簡潔に紹介する。

(1)BIOS を最新版に更新

(2)IRST(Intel Rapid Storage Technology)をインストール

(3)Windows の「リアルタイム保護」を一時的にオフ

(4)Acronis True Image for Crucial をインストール

(5)現状起動用 SATA SSDMBR 形式である場合、GPT に変換

(6)再起動して BIOSUEFI に変更し、SATA モードが AHCI であることを確認したら、いったん通常起動して Windows ログオン画面が正常に現れることを確認

(7)NVMe SSDヒートシンクを付けて PCIe-M.2 変換ボードに差す

(8)PC を電源断し、NVMe SSD を搭載した変換ボードを PCIe スロットに装着

(9)作業安全のため、現状起動用 SATA SSD 以外の SSD や HDD の電源ケーブルSATA 信号ケーブルを外しておく

(10)PC の電源を入れ、UEFI BIOS から SATA SSD と NVMe SSD が認識されている事を確認

(11)現状起動用 SATA SSD から Windows を起動

(12)Windows の「リアルタイム保護」を一時的にオフ

(13)Acronis True Image for Crucial で SATA SSD を NVMe SSD にクローン

(14)クローンが完了したら Windows の「リアルタイム保護」をオンに戻す

(15)「ディスクの管理」で、NVMe SSD に内容がクローンされているっぽい事を確認

(16)PC を電源断し、(9)で取り外した各ドライブの電源ケーブルと信号ケーブルをつなぎ直す

(17)現状起動用 SATA SSD電源ケーブルSATA 信号ケーブルを外す

(18)PC の電源を入れ、UEFI BIOS で NVMe SSD から起動するように設定

(19)Windows を起動し、「ディスクの管理」で NVMe SSD が C: ドライブになっている事と、(16)で付け直した各ドライブが正しく認識されている事を確認

(20)Acronis True Image for Crucial は不要なので、スタートアップで「無効」に設定

(21)SSDファームウェア更新を確認して、作業完了

 ……以上、ウチの環境ではおおよそ1時間ほどの作業であった。

 

5.作業の詳細

(1)BIOS を最新版に更新

 2章で述べた通り、T5810 の UEFI BIOS はバージョン A08 以降でなければ NVMe をサポートしない。 また脚注※3で示したように、A08 以降のバージョンアップでは、悪名高い「スペクター」をはじめとする、いくつかのセキュリティ対策が施されているので、特に理由が無ければ最新版の A34 に更新しておくことを強く推奨する。 2024年9月19日現在、最新版の A34 BIOS はここから入手できる

(2)IRST(Intel Rapid Storage Technology)をインストール

 正直言うと、これが NVMe にどう関わるのか、よく分からないのだが、海外サイトでは推奨されていた。 特に害は無いはずなので、ウチの T5810 ではインストールしておいたが、もしかすると不要な手順だったかもしれない。

(3)Windows の「リアルタイム保護」を一時的にオフ

 次項の手順でインストールする Acronis True Image for Crucial が弾かれないようにするため。 これをやっておかないと、次のような警告が出され、Acronis True Image for Crucial が正しくインストールされたかどうかの確証が持てなくなる。

Fig.2:「素」で Acronis True Image for Crucial インストール試行した時の警告例

 

(4)Acronis True Image for Crucial をインストール

  ウチの場合、現状の起動用 SSD が Crucial 製品であったため、Acronis True Image for Crucial を無料でダウンロード・インストールできた。 他社製品を使っている場合は、「使える」クローンアプリケーションをインストールしておくこと。

(5)現状起動用 SATA SSDMBR 形式である場合、GPT に変換

 UEFI BIOS が OS を起動することになるので、起動用ドライブは「BIOS 時代の MBR」ではなく、「EFI 時代に適合する新しい形である GPT(GUID partition table)」に切り替えておきたい(※4)。 もちろん、すでに GPT であれば、この手順は不要だ。 ドライブが MBRなの か、それとも GPT なのかは、「ディスクの管理」から確認できる。

Fig.3:ドライブのプロパティ

Fig.4:MBR だと、このように表示される

 MBR から GPT への変換は Windows の管理者コマンドプロンプトから MBR2GPT コマンドツール でできる。 まずは、
# mbr2gpt /validate /allowFullOS
コマンドで、変換に支障が無いかどうかを確認しておく。

Fig.5:mbr2gpt /validate /allowFullOS の正常結果例

"Validation completed successfully" と表示されていれば、ほぼ間違いなく MBR-GPT 変換ができるはずだが、万一に備えて、重要データやファイルはあらかじめ別ドライブにコピーしておくことを強く推奨する。 実際の変換は
# mbr2gpt /convert /allowFullOS
コマンドで実行する。

Fig.6:mbr2gpt /convert /allowFullOS の成功例

"Conversion completed successfully" と表示されていれば、GPT 変換は完了している。 「ディスクの管理」で、実際に GPT になっている事を確認しておく。

Fig.7:GPT だと、このように表示される

 

(6)再起動して BIOSUEFI に変更し、SATA モードが AHCI であることを確認したら、いったん通常起動して Windows ログオン画面が正常に現れることを確認

 すでに UEFI であるなら、もちろん変更する必要はない。 現在の PC が BIOS で動作しているのか UEFI で動作しているのかは、「ファイル名を指定して実行」から msinfo32 を実行すれば確認できる。 [システムの要約] [BIOS モード] が「レガシ」なのか、あるいは「UEFI」であるかによって区別できる。

 もし「レガシ」であるなら、PC を再起動し、F2 キーを連打して BIOSDELL では「セットアップユーティリティ」と呼ばれる)に入り、[Settings] [General] [Boot Sequence] [Boot List Option] を「Legacy」から「UEFI」に変更し、[Apply] する。

 T5810 の BIOS では、SATA モードを ATA か、AHCI か、RAID On かを選べるが、DELL 公式の説明によれば、AHCI が推奨されているので、そうなっている事を確認する。 BIOS の [Settings] [System Configuration] [SATA Operation] を「AHCI」にして [Apply] する(すでに「AHCI」であれば何もしない)。

 また、GPT に変換したドライブから正常起動できるかどうかも確認しておく。

(7)NVMe SSDヒートシンクを付けて PCIe-M.2 変換ボードに差す

 ヒートシンクの貼り付け位置が不適切だと、変換ボードに固定できなくなるので、あらかじめヒートシンク無しの状態で NVMe SSD を変換ボードに差してみて、ヒートシンクの位置決めをしておくと良い。

Fig.8:変換ボードにヒートシンク付き NVMe SSD 搭載完了の様子

 なお、ヒートシンクや NVMe SSD 製品の中には、固定用のネジが同封されていないものもあるが、今回選定した品物には、必要なネジ類はすべて入っていた。

(8)PC を電源断し、NVMe SSD を搭載した変換ボードを PCIe スロットに装着

 これは文字通りの手順で、特に難しいことはない。 PCIe Gen.3 の空きスロットに変換ボードをしっかり差すだけである。

Fig.9:こういう表示を確認する、分からない場合はマザーボードのマニュアルを参照する

Fig.10:しっかり差して固定する

 

(9)作業安全のため、現状起動用 SATA SSD 以外の SSD や HDD の電源ケーブルSATA 信号ケーブルを外しておく

 このあと、起動用 SATA SSD を NVMe SSD にクローンするのだが、その際、クローンと関係ないドライブが存在すると、何かの間違いで「クローニングによって、残すはずのドライブを上塗りしてデータを潰してしまう」という事故が起きる可能性を残すことになる。

 まず起こり得ない事だとは思うが、人間は思わぬミスをすることがあるし、万一そうなってしまったら取り返しがつかない。 そうならないための確実な予防策は、「関係ないドライブを物理的に外しておくこと」である。

(10)PC の電源を入れ、UEFI BIOS から SATA SSD と NVMe SSD が認識されている事を確認

 起動時に F2 キーを連打して BIOS に入り、ちゃんと認識されていることを確認しておく。 もし認識されていなかったら、以降の手順には進まず、問題に対応しなくてはならない……T5810 では、ちゃんとやっていさえすれば、そんな事はまず無いと思うが。

Fig.11:現状の起動用 SATA SSD と、新しく追加した NVMe SSD が、共に認識されている様子

 なお、この時点では、起動順はまったく触らない。 この後、SATA SSD から Windows を起動して、クローンしなければならないからである。

(11)現状起動用 SATA SSD から Windows を起動

 追加した NVMe SSD は、UEFI BIOS からは認識されていたが、Windows からも認識されている事を「ディスクの管理」で念のため確認しておく。

Fig.12:「不明」の「ディスク 0」として認識されている様子

 このとおり「ディスク 0」として認識されている。 この際、「ディスクを初期化する必要があります」みたいな警告が出る事があるが、GPT として初期化すれば良い。

Fig.13:GPT として初期化する

Fig.14:初期化が終わると、「不明」から「ベーシック」になる

 

(12)Windows の「リアルタイム保護」を一時的にオフ

 (3)項と同様、Acronis True Image for Crucial がクローン動作中で停止しないようにするため。 オンにしたまま、途中でいちいち「デバイスで許可」しても理屈の上では同じだが、操作が面倒だし、クローン途中で一時停止してしまう副作用がどういうものか予見できないので、オフにしておく。

 また、一定の時間経過でスリープしたり、ディスプレイがオフになるような設定をしている場合、それらもすべてオフにしておくことを推奨する。 クローン中にディスプレイが消えたりしたら、経過が分からなくなってしまうし、その時にマウスやキーボードに触れたら、マウスカーソルの場所によってはクローンが中断してしまうおそれもあるからだ。

(13)Acronis True Image for Crucial で SATA SSD を NVMe SSD にクローン

 「クローン作成ウィザードを開始」して、[自動(推奨)] [次へ(N) >] を選択する。 「概要」画面が表示されたら、「適用前」が「未割り当て」である事を必ず確認する。

Fig.15:「クローン作成ウィザード」で通常は充分

Fig.16:ウチも自動を推奨する(余計なドライブを外してあるから)

Fig.17:この確認を怠ると悲劇が待っている

  確認したら [実行(P)] する。 クローニングは粛々と進行するが、念のため、クローニング中は、キーボード、マウス、タッチパネルなど、一切さわらず、放置して見守りたい。

Fig.18:クローニングがスタートした

Fig.19:クローニング進行中

Fig.20:SSD 同士といえども、それなりの時間はかかりそうな雰囲気

Fig.21:PC に触れたくなっても、ガマンして見守ろう

 ちなみに、ウチの環境では、残り30分くらいの時に突然、完了した。 当て推量だが、ソース側ドライブの空き容量も含めた全容量にもとづいて処理時間を算出しているから、ではなかろうか。

Fig.22:クローン完了

 

(14)クローンが完了したら Windows の「リアルタイム保護」をオンに戻す

 これを忘れても Windows が一定時間後にオンに戻してくれると思うが、忘れないに越したことはない。

(15)「ディスクの管理」で、NVMe SSD に内容がクローンされているっぽい事を確認

 この時点で NVMe SSD にドライブレターは付いていないが、そのままドライブレター無しで良い。 現状起動用 SATA SSD のドライブレターは C: のままで良い。 ドライブ文字の変更は一切しない

Fig.23:クローンされたらしい様子、ドライブレターは無くて良い

 

(16)PC を電源断し、(9)で取り外した各ドライブの電源ケーブルと信号ケーブルをつなぎ直す

 クローンが終わったので、もう復旧して良い。

(17)現状起動用 SATA SSD電源ケーブルSATA 信号ケーブルを外す

 「万一に備えて『元の SSD』もアクセスできるようにしておくと良いのでは」と思うかも知れないが、起動用ドライブが複数あると混乱や事故のもとだ。 その PC が特殊用途でないかぎり、SATA SSD は外しておく方が問題は少ない。

 もし「元の SSD」の内容が必要になったら、その時につなげば良いのだから(そしておそらく「そんな時」は来ない)。

(18)PC の電源を入れ、UEFI BIOS で NVMe SSD から起動するように設定

 起動時に F2 キーを連打して BIOS に入り、[Settings] [General] [Boot Sequence] を次の画像のように設定し、必要なら [Apply] する。

Fig.24:新しい NVMe SSD から起動する BIOS 設定

 

(19)Windows を起動し、「ディスクの管理」で NVMe SSD が C: ドライブになっている事と、(16)で付け直した各ドライブが正しく認識されている事を確認

 システムが正しく起動すると、起動用 NVMe SSD は自動的に C: ドライブになってくれる。 もし(15)の時に、わざわざ「親切心」で何らかのドライブレターを付けてしまうと、起動時にどうなるかウチには分からないし、下手すると起動しないかもしれない。

Fig.25:期待したドライブレター C: が自動的に付与される

 

(20)Acronis True Image for Crucial は不要なので、スタートアップで「無効」に設定

 アンインストールしても良いかも知れないが、のちのち何かで必要になる事もあるかもしれないので、無効化だけにとどめておく。 タスクマネージャーを起動し、[スタートアップ] タブから「Acronis TIB Mounter Monitor」、「Acronis True Image for Crucial」、「Acronis Scheduler Service Helper」を「無効」に設定する。

(21)SSDファームウェア更新を確認して、作業完了

 必要な作業は(20)項までにすべて終えているが、新規ハードの導入なので、ファームウェアの更新はいちおう確認しておきたい。

Fig.26:更新されたファームウェアは無かった

 

6.測定

 温度などの状況は良好である。

Fig.27:CrystalDiskInfo の様子

 次に SATA SSD と NVMe SSD の性能を比べてみる。 SATA SSD Crucial CT500MX500SSD1 について2021年2月に測定した結果は次の通り。 これでも HDD に比べれば充分高速である。

Fig.28:SATA SSD の性能

 今回切り替えた NVMe SSD Crucial CT1000P3PSSD8JP は次の通り。

Fig.29:NVMe SSD(PCIe Gen.3)の性能

CT1000P3PSSD8JP 自体は Gen.4 対応だが、T5810 が PCIe Gen.3 なので、そこが限界になってしまっている。 とは言え、Gen.3 理論値に近い性能が出ているので、満足すべき結果だろう。

 実際に使ってみたところ、Windows の起動や、プルダウンメニューの展開、Firefox ブラウザーの動作、などは明らかに速くなったが、アプリケーションの起動は、あまり速くなったとは感じられなかった。 OS をクリーンインストールすれば、様々な自動設定値が異なるものになるから、体感結果も違ってくると期待できるが、今回は見送る。

 

7.関連事項いろいろ

■ 他ドライブのドライブレターについて

 ウチの環境では、たまたま HDD を F: から割り当てていたが、クローン完了後にあらためて見ると(Fig.25)、これは「ギリギリの設定」だった。 GPT の起動ドライブは、C: を含めて2つのドライブレターを必要とするからだ。 光学ドライブが有る場合、起動ドライブ C:、光学ドライブ D:、起動ドライブ E: という割り当てになるので、F: は「ギリギリ」である。

 ギリギリが嫌ならば、手順(9)より前の時点で、「ディスクの管理」から起動用以外のドライブレターを G: 以降に割り当てておくと良いだろう。

■ Compatibility Support Module について

 いくつかの関連記事において、「UEFI BIOS 設定で Compatibility Support Module(CSM)を無効にせよ」という記載が見られる。 CSM は名前が示す通り、レガシー BIOS 時代の「古いデバイス」を UEFI 環境でも使えるように「互換性を提供する機能」だ。 しかし CSM が有効になっていると、UEFI ならではの新機能やデバイスが使えなくなったりする。 たとえば Windows 11 で必須とされる「セキュアブート」は CSM が有効だと使えない。

 今回の例において NVMe SSD で起動するという目的のためには、CSM を無効にして良いはずだが、T5810 の BIOS 設定ではそのものズバリの設定項目が見つけられなかったため、前章までは CSM に触れなかった。 おそらく、5章(18)項の Fig.24 で示した [Boot List Option] を「Legacy」から「UEFI」に設定すると、CSM が無効になるのではないか、と思う。

 これまた推測だが、T5810 の BIOS は、レガシー BIOS のような見た目だが、たぶん、その正体は「CSM 有効な UEFI BIOS」なのだろう。 UEFI ならではの機能が CSM によってロックされた設定で出荷されていて、それが Windows OS から見ると「レガシ」に見える、という事ではなかろうか。

■ Momentum Cache について

 Crucial の SSD では Crucial Storage Exective という管理ツールが無料で使える。 このツールでは Momentum Cache という書き込みキャッシュ機能が有効化できる。

 これにより書き込み処理の体感時間は短くなるが、PC のメインメモリーをキャッシュ領域にするため、突然の停電などでデータが失われるおそれがあり、バッテリー駆動のノート PC や、UPS 常用のデスクトップ PC においてのみ、有効化が推奨されている。

■ オーバープロビジョニングについて

 Crucial Storage Exective ではオーバープロビジョニング(OP)の設定もできる。 とはいえ、SSD はその性質上、メーカーによって、もともと OP 領域は相応に確保されている。 メーカー初期設定よりも高いレベルで信頼性と性能を確保したい場合にのみ、Crucial Storage Exective で OP を拡張すれば良いだろう。

 ただし、OP 拡張するには、前もって、拡張分だけパーティションサイズを縮小しなければならない。 OP による信頼性と性能は、犠牲にした容量に比例するので、OP 拡張するかどうか・どの程度拡張するかは、容量・信頼性・性能のバランスをどう考えるかによる。

クリーンインストール時のデータ用ドライブについて

 起動ドライブをクローンするのではなく、Windowsクリーンインストールするにあたっては、DELL は「Windows オペレーティング システムをインストールするためのベスト プラクティスは、インストール時に必要な起動ドライブのみの電源をオンにすることです」と言っている。

 また、DELL は別の記事においても、Windows を NVMe ドライブにクリーンインストールするにあたっては、「SATA ドライブをすべて無効化」する方が良い場合があると言っている。 その PC の世代、あるいは Windows インストールメディアの世代にも依る話であるらしい。

 ともかく、クリーンインストールであろうがクローンであろうが、OS をドライブに入れる時は、余計なドライブは外しておくのが良い、という事はウチも同意する。

■ クローン後の初回起動について

 Crucial の公式動画では、「OS を SATA ドライブから NVMe にクローンする場合、新しい NVMe ドライブの初回起動をセーフモードに設定し、Windows における NVMe ドライバーの読み込みを可能にする必要があります」などと説明しているが、少なくともウチの T5810 では、そんな必要は無かった。

 確かに、何年か前までの Windows には、NVMe デバイスドライバーが標準搭載されていなかったので、Windows インストールメディアとは別のメディアから追加インストールする必要があった。 おそらく、Crucial の動画は情報が古いのだと思われる。

■ Clover と Rufus について

 T5810 は BIOS バージョン A08 以降で UEFI に NVMe ドライバーが組み込まれたため、OS が起動できるが、さらに古い機種だと、UEFI であっても NVMe をサポートしていなかったり、そもそも BIOSUEFI をサポートしていなかったりする(それでも PCIe-M.2 変換ボードを使えば物理的には NVMe ドライブを内蔵できる)。 そのような場合、内蔵 NVMe ドライブから OS を起動するには、
USB メモリーに『NVMe ドライバーを有効化した Clover ブートローダー』を入れておき、USB メモリーから起動する
という方法がある。 起動可能な USB メモリーを作るためのツールは Rufus がよく使われている。

 しかし、ウチとしては、ここまでして NVMe 起動ドライブにこだわる必要性は無いと思う。 近年、ルートキット攻撃について警戒が喚起されているのに、わざわざ自分からメーカー非公式のルートキットを仕込むようなマネをしてまで NVMe SSD で起動する必要は(価値観をどこに置くかにもよるが)たぶん無い。

 ただ、このような起動の仕方は、「ドングルが無いと起動できない」というセキュリティー施策になると考えることもできる……かもしれない(レガシー BIOS 限定ではあるが)。

 

8.参考サイト・記事

 

9.脚注

※1 できないわけではないが、普通やらないだろうし、やるなら面倒なことになる。 7章「Clover と Rufus について」を参照のこと。 ※4で示したような「謎の実例」も有るには有るが、推奨されないだろう。

※2 どこかで聞いたような話だ、と思った方は、たぶん PC 使用歴がそこそこ長い。 48bit LBA、いわゆる Big Drive が、登場初期はまさにそのような状況だった。

※3 余談ながら、ウチがまとめた「非公式の T5810 BIOS バージョン一覧」を提供しておく。

※4 「切り替えておきたい」という、歯切れの悪い表現になった理由は、後になって、ウチに「レガシー BIOS で、MBR の NVMe SSD から起動する Windows 10 マシン」が有ることに気付いたからである。

Fig.30:ウチにあった謎のレガシーマシン

なぜこれが出来るのか、よく分からないが(LAN を介したリモートデスクトップで使っていてディスプレイもキーボードも直接つなげていないため BIOS や POST の確認が面倒)、SSD にしては Windows 起動が遅いので、もしかすると BIOS が OS 起動エラーになった後で Windows ブートマネージャーが NVMe SSD をデフォルトで選択してタイムアウトで起動しているのかもしれない。 ともあれ、ネット上の多くの記事・文書では、「UEFI から起動するドライブは GPT にする」とされていて、そうする実害は無さそうだし、将来的に Windows 11 に移行するにあたっては GPT の方が都合は良いので、本例では GPT 変換を実行した。

 

10.免責事項

 本記事は、メーカー関係者でも何でもない一般人が独自に書き下したものです。 私の環境では、この記事の通りにやって上手くいっていますが、本記事の内容すべてについて私は正確性を保証できませんし、誰かが本記事の通りに行動したとしても私は責任を持てません。 用語の使い方も間違っているところが有るだろうと思います。 「疑いの眼」を持って読んでいただければ幸いです。

(以上)

平和の祭典

 ウチが子供だった頃、五輪は「平和の祭典」とか言われてて、開催期間中だけは戦争・紛争地域の戦闘行為をやめましょう、という国際的な気運が有った。

 さて2024年のパリ五輪ではどうであろうか。 ロシアとウクライナの戦争、イスラエルによるハマスとの戦闘をはじめとして、世界各地で集団的な戦闘行為は続いているが、「五輪期間中だけはやめよう」という声を、とんと聞かない。 報道されていないだけだろうか。

 

 国際政治の場で顔が売れている人なら誰でも……バッハIOC会長、マクロン・仏大統領、プーチン・ロシア大統領、習近平・中国国家主席、ゼレンスキー・ウクライナ大統領、ネタニヤフ・イスラエル首相、バイデン・米大統領、フランシスコ教皇、あるいは岸田首相だって良いし天皇陛下でも良い、こうした方々が、誰か「五輪期間中だけでも戦闘行為をやめよう」と大きな声を上げないものだろうか。

 今、金メダルだとか騒いでいる時にも、人間どうしが殺しあい、人命が失われ、生活の場が破壊され、そのために戦費が浪費されている。

 

 大きな声を上げられる人が、「今だけでも良いから戦闘をやめよう」と国際社会に提言する事は、たとえ「口だけ」であっても、その人にとって、大きく株を上げる事になるだろう。

 また、もしそれがきっかけになって、10日だけでも、あるいは1週間だけでも戦闘行為が止み、静かで平穏な生活を少しでも取り戻せば、戦闘の現場にいる兵士達は、五輪が終わった時、「さあ戦争を再開しよう」という気持ちになりにくいかもしれない。 うまくやれば、戦闘を本当に終わらせる事もできなくはないだろう。 それが出来れば、高い金額と多大な労力を割いて五輪を開催する意義は大いにあるし、それは人類共通の誇りとなるはずだし、そこに参加できるアスリートも、さらに気持ちを高められるだろう。

 

 誰か、それを言える人はいないものか……。