khurata’s blog

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祈る時はいつもひとり (白川道・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 仕事の師と敬愛する男が事故死してから程無くして、仕事を共にした親友が失踪した。 時は1995年、真実を探し、自らの納得を追い求める主人公は、情報収集と謎解きの末、返還前の香港裏社会と、失踪した親友の関わりを知ることになり、命を狙われる羽目に陥ってしまう。 何度も危機に見舞われながらも、協力者を得、親友の妹と強く結ばれて、真実を掘り起こす調査は続く。 しかし主人公は自らのミスにより、別の友人と最愛の女性を失う。 主人公に関わった幾人かも命を落とす。 結果、主人公の命は助かるものの、裏社会に通ずるという事は親しい人達の命を引き換えにする事なのだという虚無感に彼は覆われただろう。

 その後、主人公は最愛の人との思い出を胸に秘めて生き続ける。 その後半生は、彼の納得と引き換えに命を落とした人々のために、ひとり祈り続ける日々になるのだろうと思われる。 主人公が真実を求める行動を起こさなければ、何人もが生き存えていたのだから。 真実と命、どちらが重いのかを問いかける娯楽作品は多いが、本作もそのひとつであろう。 

祈る時はいつもひとり 上 (幻冬舎文庫)

祈る時はいつもひとり 上 (幻冬舎文庫)

  • 作者:白川 道
  • 発売日: 2012/04/12
  • メディア: 文庫
 

 勝手に正誤表

文庫版 初版 P.372 誤 顔を綻 → 正 顔は綻 もしくは 顔が綻