khurata’s blog

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塩狩峠 (三浦綾子・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 タイトルの意味を、読者は衝撃と共に知る事になる。 どちらかと言えば賢しい少年だった主人公が、次第次第に敬虔なキリスト者に変容してゆく様は興味深い。 少年の頃から成人するまでの間、キリスト教を心の外に置いていた主人公の心情を思えば、その変容は鮮やかな転身であり、だからこそ「塩狩峠」のくだりは衝撃的である。

 同時に本作は、「ふじ子」という少女に抱いた初恋を貫き通すことになった主人公の恋物語であり、また生涯の友「吉川」(ふじ子の兄である)を得た主人公の義の物語でもある。 明治期に手紙というタイムラグのある方法によって培われてゆく主人公と吉川の2青年の友情は、清々しく微笑ましく、好ましい。

 主人公の清冽な生き方を決めたのは、吉川とふじ子の兄妹であったことを思うと、衝撃のラストはこの兄妹が用意したものと言えなくもない。 それが果たして神の愛であったのかどうか、キリスト者でない私には分からないが、しかし主人公の取った行動はまさしく最大の愛であっただろう。 

塩狩峠 (新潮文庫)

塩狩峠 (新潮文庫)