khurata’s blog

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世界地図の下書き (朝井リョウ・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 養護施設で暮らす小学生の主人公「太輔」が出会う、3年間だけの、しかしかけがえの無い仲間達との物語。 そこにいた7歳ほど年上の少女「佐緒里」に、太輔は亡き母を想う。 その想いはやがて太輔自身も気付かぬ淡い恋心へと変わってゆき、その力は仲間達をも巻き込む「作戦」へと太輔を駆り立てる。

 この作戦を通じて、太輔と仲間達はひとつの大きな成長を遂げてゆく。 彼らがこれから描いてゆく広大な世界は、まだ「下書き」なのだ。 いつの日か。彼らは「あの頃過ごした日々が、今の自分の下書きだった」と気付くのだろう。

 本作は児童文学と捉えられているようだが、これと大人になってから読み返されるべき作品だろう。 周囲の大人達の心の動きも見事に描いた本作は、読者の年齢によって、読後感が変わってくるはずだから。 

世界地図の下書き (集英社文庫)

世界地図の下書き (集英社文庫)