khurata’s blog

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火花 (又吉直樹・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 あまりにも突き抜けた才の持ち主は、その才に随って生き、滅んでゆくしかないという事を、ほどほどの才を持つ者が敬愛と畏怖を持って傍観している物語であり、『アマデウス』的な作品と言える。

 しかし『アマデウス』とは異なり、「サリエリ」的ポジションにいる主人公が、天才「神谷」に敵意を抱かず、敬愛の念を持ち、理解しようとし、「伝記」を作ろうとしている所に、私は本作の醸し出す悲哀を感じる。 突き抜けた天才は、それを「翻訳」できる者が近くに居続けなければ、決して世間に「伝わる」ことが無いのである。 我々は理解可能もしくは伝達された歴史だけを残しているのであるから、本作を読むと、歴史に埋もれた天才は決して少なくないのではないか、と思わされる。 

 ちなみに私の中で神谷は「千鳥」の大悟っぽい見てくれのイメージ。 「楽しい地獄」と言うシーンを読んだ時に、これを笑顔で言っている大悟が頭に浮かんだのである。

火花 (文春文庫)

火花 (文春文庫)