<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>
「黒原弥生」がパソコン教室に通っていた事が分かるくだりの辺りからの展開が急激に都合良すぎるように見えてしまって、それまでの道程は何だったんだ、と言いたくなった。
クライマックスシーンの黒原弥生の独白録音を「高城」がもみ消してしまったり、その後で高城がしばらく放心して同僚からの再三の電話に出なかったりする行動は、いかにも作り物のキャラクターっぽく感じられてしまい、リアリティーに欠ける。 高城の職業や立場を考えると、重大な録音を消すなら消すで、相応の理由が無いと説得力が希薄だ。
また、登場人物達が、やたらと「電話では話せない、直接会って話したい」という事を言うのだが、どうもそうは思えない用件であって、作品の中で人物を移動させる口実ではないかと感じてしまうため、作品世界に没入しづらい。
黒原弥生が大きな危険を犯して「処理」する動機も私には納得できなかったし、その現場の目撃証言が全く無かったりするのも不自然に思える。
それなりに長い内容を最後まで読ませるには読ませるのだが、読後に「これは結局何だったんだろう」という感じは残った。
とは言っても、普段フィクションをほぼ読まない私でも著者名は知っていたしソラで書くこともできるのだから、ファンは多いに違いない。 たぶん、私と相性が合わないだけなのだろう。 どんなに美味な料理にも好き嫌いは有る。