khurata’s blog

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ビクター Victor 業務用 S-VHS で使われる 7ピンの S端子を通常 4ピン S端子につなぐ変換ケーブルを作る

(もともと「Yahoo!ブログ」だったものを転載しています)
(投稿日時:2017/9/6(水) 午前 6:01)

はじめに

 表題通り、ビクター Victor の業務用 S-VHS デッキなどで採用されている Y/C358 出力端子(7ピンS端子)から、通常の 4ピンS端子に変換する「オス-オス」ケーブルを自作してみた……ので、詳細を書き残します。
(実は自分自身が知りたかった事柄なのですが、ネットを漁っても、どうもイマイチでした)

 たまーにヤフオク!で出品されていたり、電気街のジャンクパーツ店で購入できたり、あるいは海外ネット店舗から購入できたりするのですが、ケーブルの品質が良く分からないものだったり、中古だと劣化の度合いが不明だったり、価格が不適当だったり、長すぎたりして、購入に踏み切るには今ひとつ……という事が多々有ります。

 また、そもそもモノが見当たらない、という場合、いつ見つかるか分からないまま探し回るのも大変です。

 ならば、納得行くように作ってしまった方が手っ取り早いでしょう!

 

適用機種

 私が知る限りでは、BR-S822、BR-S622、BR-S811、BR-S611、BR-S810、BR-S610、などの背面にある Y/C358 という映像端子で、コレが使えます。

 

基本知識・映像を作る情報の表現と伝達

 こんな記事を読む方には説明を要しないと思うのですが、初心者が来ている可能性も少しあるので一応説明を……分かっている方は読み飛ばして下さい(汗)。

 液晶などのディスプレイに映し出される「色の付いた映像」は、良く知られているように「光の3原色」である赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の混合によって出来ていて、それぞれの頭文字を取って RGB 映像と呼ばれます。
 いわゆる「フルカラー」映像は、R・G・B 共に「全く無し」(段階 0)から「これ以上無い」(段階 255)までの 256段階を使うので、R が 256段階×G が 256段階×B が 256段階=16777216、つまり約 1677万色が表現できるわけです。

 この RGB 情報をそのまま伝送すると、とても色鮮やかでクッキリした映像が得られるのですが、人間の目は
「緑色に対しては鋭敏だが赤と青に対してはさほどでもない」
「輝度の変化に対しては鋭敏だが色の変化に対してはさほどでもない」
という特性があり、また
「映像の明るさは緑色でおおかた決まる」
という性質があるので、

「緑色はきちんと扱うが、赤と青はある程度『間引き』しても実際上は問題ない」

のです。 こうした特性を利用して、信号の情報量を減らすために、「色差信号」というものが考え出されました。

 色差信号は、「Y/Cb/Cr」とか「Y/Pb/Pr」とか「Y/R-Y/B-Y」などと書き表されます。
(SD映像の場合は Y/Cb/Cr が使われ、HD映像の場合は Y/Pb/Pr が使われる事が多いです……この記事では SD映像を扱うので、以降 Y/Pb/Pr は出てきません)

 Y は「輝度(緑成分が多い)」、Cb ないし B-Y は「色差(青)」、Cr ないし R-Y は「色差(赤)」を表します。

 RGB信号から色差信号を算出したり、あるいは伝送された色差信号から RGB信号に戻す(映像を出す時はこの変換が必要になる)計算については、ここに詳細が掲載されていますのでご覧になってみてください。

 色差信号は、RGB信号に比べると、おおむね3分の2程度に情報量が減らせるので、
・撮影は RGB
・伝送前は色差に変換
・伝送は色差
・画像処理や描画は RGB に戻してから
という使われ方が定着しました。

 

映像ケーブルの信号について

 SD 映像を伝送するアナログ信号線には、大別して以下の3種類があります。

1.色差コンポーネント

 単に「コンポーネント(映像)」とか「色差(映像)」と言うこともあります。

 色差コンポーネントは、「Y信号」「Cb信号」「Cr信号」と各 GND(グランド)信号を、それぞれ別の線で伝送する方法です。 従って伝送には計6本の線が必要です。 多くの場合、「芯線」と「シールド線」を持つ信号ケーブルを3本使って伝送されます。

 「Y信号」と「Y の GND信号」でケーブル1本、「Cb信号」と「Cb の GND信号」でケーブル1本、「Cr信号」と「Cr の GND信号」でケーブル1本、というわけです。

 コンポーネント component とは、「(それぞれの)成分」とか「構成要素」のような意味です。 ですから「AVコンポ」と言えば、アンプやカセットデッキなどの専用機器を組み合わせている事を意味します。 チューナーやスピーカーやアンプひとまとまりになっている、いわゆるラジカセは、構成要素に分離できないのでコンポとは呼べません。

 RGB に迫る伝達能力を持つので業務用の映像機器に多く用いられますが、家庭用機器でも DVD プレーヤーの高級機などに採用されていました。
 しかし家庭用機器で3本のケーブルを使うのは煩わしく、後に D端子というコンパクトな端子にまとめられました。 D端子は「端子の形状が D に見える」という事で命名されたもので、デジタルとは全く関係がありません。 D端子の中を通っているのは、あくまでアナログの色差コンポーネント信号です。

 代表的な端子形状は、「BNC端子×3」、「RCA端子×3」、「D端子」などがあります。 これらは物理形状が違うだけで、通っている映像信号は同じなので、変換コネクターなどを使って相互変換できます。
(ただし D端子には映像信号以外の制御信号を通す線も追加されていて、これに関しては BNC端子×3や RCA端子×3ではどうしようもありません)

2.Y/C分離

 Y は「輝度」、C は「色」の意味です。 人間の目は、先述したように「輝度の変化に対しては鋭敏だが色の変化に対してはさほどでもない」という特性があるため、RGB とか Y/Cb/Cr のように「律儀に3原色に分離して扱う」ことをしなくても、輝度と色だけに分離して扱えば、それだけでけっこう良い画質に見えるのです。
 もちろん、色差コンポーネントには負けますが、後述するコンポジットよりは、かなり有利です。

 Y/C分離は、「Y信号」「C信号」と各 GND信号を、それぞれ別の線で伝送する方法です。 従って合計4本の伝送線が必要です。

 これを1本のケーブルで伝送できるようにしたのが、いわゆる「S映像ケーブル」であり、その両端が「S端子」です。 S映像ケーブルには、2本の芯線と、それぞれのシールド線、計4線が収められています。

 代表的な端子形状は、「S端子(4ピン)」、「Y/C358端子(7ピン)」などがあります。 これらは物理形状が違うだけで、通っている信号は同じなので、変換コネクターなどを使って相互変換できます。 今回自作しようとしているのはコレです。

3.コンポジット

 輝度も色も混合して、信号線と GND線の計2線だけで映像を伝達できるようにしたのがコンポジットです。

 コンポジット composite は「合成された」とか「混成の」という意味です。 「構成する」「組み立てる」の compose と同語源です。

 基本的に信号ケーブルは信号線と GND線で出来ているので、コンポジット映像信号は「普通のケーブル1本」で伝達できる、という長所がありますが、なにしろ RGB 全ての信号を混ぜてしまっているので、画質面では不利です。
 素人が見ても、コンポジットと Y/C分離は明らかに違う画質だと分かってしまいます。

 ただ、画質に関係なく、「とにかく見えれば良いのだ」という用途では、今もよく使われていて、映像伝送の事実上標準かつ必須の伝送方式になっています。 業務用、民生用を問わず、ビデオ映像機器で、この信号端子の無い機器というのは、ほぼ見当たりません。
(業務用機でも、メニュー設定画面はコンポジット映像で出す、という事は普通に行われています)

 代表的な端子形状は、「BNC端子」、「RCA端子」などがあります。 これらは物理形状が違うだけで、通っている信号は同じなので、変換コネクターなどを使って相互変換できます。

 

まずは Y/C分離(S端子)の各ピン構成から

 ケーブルを自作するにあたって絶対に知っておかなければならないのが、各端子の各ピンは、どの信号伝達を担っているのか(ピン・アサイン)です。 これは図書館に行って関連書籍を見たり、あるいはググったりしても分かるのですが、ここでは実際の写真でご覧いただきましょう。

 まずはおなじみの S端子(プラグ側)です。

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<Fig.1…S端子(プラグ側)>

 次にソケット側です。

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<Fig.2…S端子(ソケット側)>

 関連書籍や説明サイトでは、よくソケット側についての図が描かれています。 どちらかさえ分かれば良いので、どちらか一方だけ説明すれば足りるのですが、たまに見かける失敗談を見ますと、Y側と C側を逆に付けてしまった、というのがあり、そういう失敗はプラグとソケット両方についてきちんと見ておけば無くなるでしょう。

 次は Y/C358端子のソケット側です。

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<Fig.3…Y/C358端子(ソケット側)>

 S端子と違って、ソケット側にもプラグ側にも、各ピンにちゃんと小さく番号が刻印されているので、これは片方だけ紹介しておけば間違いありません。 Y/C358 は親切です(笑)。

 S端子も Y/C358端子も、先述の通り、中を通っている信号は同じなので、物理的につなげてやれば良いだけです。 極端な話、4本の銅線をそれぞれのソケット端子穴に突っ込めばOKなのですが、やはりプラグの形をしていないと扱いづらいので、プラグ付きケーブルを作っていきましょう~。

 

材料と道具

 どうしても必要な材料は、

  • S端子ケーブル
  • Y/C358端子(オス)
  • ハンダ
  • ビニールテープ

です。 有るとモアベターな材料は、

  • 絶縁用チューブ(熱で収縮し固着する)

です。

 Y/C358端子(オス)は、RM12BPE-7PH(71) という型番で売られています。 「ヒロセ電機」の製品ですが、私は楽天のショップで通販購入しました。
(ちなみにメスは RM12BPE-7S(71) だそうですが今回は使いませんでした)

 どうしても必要な道具は、

  • ハンダごて
  • 六角レンチ(1.3ミリ)
  • マイナスドライバー

です。 有るとモアベターな道具は、

  • カッターナイフ(被覆を取り去るのに使う)
  • セロテープ(仮止めに使う)
  • 小型万力など(小さなパーツの把持に使う)
  • ヘアドライヤー(絶縁用チューブの固着に使う)

です。

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<Fig.4…材料の一部>

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<Fig.5…道具の一部>

 

作業1.Y/C358端子側の結線

 六角レンチを使って Y/C358端子の固定ネジを緩めます。

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<Fig.6…Y/C358端子のネジを緩める>

 取れました。 ネジは小さいので無くさないように注意!

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<Fig.7…Y/C358端子の分解>

 S映像ケーブルの片方の端子を切り落として、ケーブルの内部を観察。 ご覧の通り、このケーブルの場合は、青と黄でそれぞれ芯線とシールド線があります。 他のケーブルだと色は違っていたりしますが、とにかく、線を区別しておくことが重要です。

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<Fig.8…S映像ケーブルの断面>

どっちの色をどう使っても良いのですが、ここでは「青色を Y」「黄色を C」と決め打ちして、作業を続けます。
(テスター、あるいは乾電池と豆球があれば、どの線がどのピンかは簡単に調べられるのですが、ここではあえて「全てを手作り」してみます)

 Y/C358端子に、「首無し」の Sケーブルを通します。

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<Fig.9…S映像ケーブルを Y/C358端子に通す>

 ケーブルの被覆を取り去ります。 すぐ内側にあるシールド線を傷つけないように注意!

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<Fig.10…S映像ケーブルの加工その1>

 シールド線と芯線を撚(よ)り分けます。

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<Fig.11…S映像ケーブルの加工その2>

 芯線の被覆を剥いで露出させます。

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<Fig.12…S映像ケーブルの加工その3>

 熱で収縮する、絶縁用のチューブをあらかじめ通しておきます。

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<Fig.13…S映像ケーブルの加工その4>

 それぞれの線に、ハンダを少し染み込ませておきます。 コツとしては、なるべく少量で。 この写真は、ちょっと多かったと思います(汗)。

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<Fig.14…S映像ケーブルの加工その5>

 Y/C358端子(オス)の、端子側です。 小さくて見づらいですが、各ピンに、ちゃんと番号が刻印されています。 ありがたい……!

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<Fig.15…Y/C358端子(オス)の端子側>

 その裏側、先ほど下処理したケーブルをハンダ付けするピン達です。 こっちにもちゃんとピン番号が刻印されていて、本当に助かります。

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<Fig.16…Y/C358端子(オス)の端子裏側>

 先ほど示したピン・アサイン(ピン配置)と、決め打ちした線の色に従うと、

  • pin1=Y、青色の芯線につなぐ
  • pin2=Y-GND、青色のシールド線につなぐ
  • pin5=C、黄色の芯線につなぐ
  • pin6=C-GND、黄色のシールド線につなぐ

という事ですから、その通りにハンダ付けします。

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<Fig.17…Y/C358端子(オス)の端子裏側に結線>

 ハンダ付けが終わったら、あらかじめ通しておいた絶縁用チューブをハンダ付けした部分に持ってきて、ドライヤーの熱風をあてて固着させます。 もう少し細いのを使えば良かったですね……(汗)。

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<Fig.18…Y/C358端子(オス)の端子裏側の絶縁その1>

 さらにビニールテープでシールド線のあたりもしっかり絶縁しておきます。

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<Fig.19…Y/C358端子(オス)の端子裏側の絶縁その2>

 あとは、あらかじめ通しておいたプラグの胴体部分を元通りにネジ込んで、六角レンチとネジで固定すれば、Y/C358端子(オス)側は完成です!

 

作業2.S端子側の結線

 S端子は、ケーブルの片方に残っているので、特に何もする事はありません。 テスターを使ったり、テスターが無くても乾電池と豆球があれば、どのピンがどの線につながっているのかは簡単に分かるので、それで終わりです。

 が、ここではあえて、S端子自体の自作キットがあるので、それで S端子も作ってしまいました(苦笑)。

 まずは S端子の胴体部分に、もう片方の端を切り落とした S映像ケーブルを通します。 キツくて通しにくい場合は、石けん水をほんの少し塗ってやります。

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<Fig.20…S端子にケーブルを通す>

 そうしたら、図 Fig.10~14 と同様に、ケーブルの端を下処理してやります。

 そして S端子のピンの裏側に、それぞれの線をハンダ付けします。 S端子は何しろ小さいので、下の写真では作業のためにクリップで止めています。

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<Fig.21…S端子の各ピンを結線>

 Y/C358端子と違って、わざわざピン番号が刻印されていない S端子は、うっかりすると結線を間違えてしまうかも知れません……が、下の写真を見れば、どうつなぐかは一目瞭然でしょう。

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<Fig.22…S端子ピンアサインの実体画像>

 先述の通り、どのピンがどの線かを調べれば、S端子をわざわざ自作する必要は無いのですが、いちおう参考までに……。

 そしてもちろん、こっちもちゃんと絶縁処置をしておきます。

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<Fig.23…S端子ピン裏側の絶縁>

 あらかじめ通しておいた S端子の胴体部分を引き上げて、これで完成です!

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<Fig.24…S端子の完成>

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<Fig.25…完成した変換ケーブル>

 

作業3.映像の確認

 さて、作業もいよいよ大詰めです。 完成した変換ケーブルで、ちゃんと映像が伝わるのか、手持ちのビデオ機器を使ってチェックしましょう。

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<Fig.26…Y/C358端子と S端子をつなぐ>

 ちゃんと映像が映りました! 奥に見えるのは、モニター端子(コンポジット)につないだ液晶テレビの画面ですが、手前側、S端子をつないだビデオカメラにも、同じ画が映し出されています。
(この画像だと映像がひどいものに見えますが、それは私の撮影が下手なせいで、実際にはきれいに見えています)

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<Fig.27…変換ケーブルによる Y/C分離映像の確認>

 ちなみにこの映像は、20世紀の傑作アニメーション『少女革命ウテナ』の1シーンです。 話は脱線しますが、幾原監督のアニメオリジナル作品は、『輪るピングドラム』や『ユリ熊嵐』などありますが、どうにも『ウテナ』を越えられていない、という感がありますね……。

 

おわりに

 冒頭にも書いた通り、私自身が見たいと思っていた情報について、詳細に書き残してみました。 これ以上の詳細は無いと思います。 ハンダごてを最後に持ったのは中学の技術の授業だ、という方でも、この記事を見れば変換ケーブルが自作できると自負しています。

 何らかのお役に立てれば幸いです!
(以上)