khurata’s blog

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海賊とよばれた男 (百田尚樹・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 「出光」の創業氏である出光佐三の人生譚を基にした立身義侠伝と言うべき小説。 明治生まれの主人公が昭和50年代までの約1世紀を、幾多の敵を作りながらも信念と人間関係で切り抜けてゆく。

 作中、「腐った組織」が度々出てくるが、登場人物は胆力の有る男が多く、彼らのやりとりに目頭を熱くさせられることもしばしば。

 本作は娯楽性も大きいが、米国が大国になった経緯や、米英が中東(特にイラン)に及ぼした暗雲などを描いた歴史読み物としても読み易く面白い(それらの事実関係について私はいちいち調べなかったので、事の真偽は正直言って分からないが、著者の博識はそれらを一級の娯楽作品へと見事に作り上げた)。

 また、金銭にせよ教育にせよ、これ、と見定めた人物に対して思い切った投資をする事の大切さをも本作は描いている。 本作を読むと、人物に対する投資が出来る事こそ、人間の豊かさではないかと思わされる。 だめだったら「一緒に乞食をやろう」という台詞は、実に豊かな人間のみが発し得るのではないか。

 なお、作中では触れられていない事だが、主人公が高度経済成長時代を石油と共に生きてきたと同時並行して、原子力政策も進んでいた事を考え併せると、我が国のエネルギー政策・エネルギー問題の根を垣間見る思いがする。