khurata’s blog

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パーフェクト・プラン (柳原慧・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 2004年の発表当時は激賞されていたそうだが、残念乍ら時の試練に耐える作品ではなく、2020年現在に読んでみると、いかにも古臭く感じる。 登場人物達の造形も浅く、「俊成」の驚くべき特殊な才能が話の筋に何ら活かされるわけでもなく、「ヨシュア」の腕前とやる事のギャップはなぜか大きい(なぜ原発や軍事施設や国家機関のクラックをしなかったのか、映画『ウォー・ゲーム』に心酔しているというのに)。

 また、若き女性刑事「馨」の勝手な単独行動や、犯行解明や捜査現場において馨のコンピューター技術に周囲の先輩刑事や上司が唯々諾々と流されるシーン、逮捕後に護送されている人物に携帯電話を使わせる刑事など、刑事の行動として有り得ない描写が目立ってしまい、物語に没入しづらい。

 我が子を連れ去られた「俊英」が犯人のメールを信じて易々と従ってしまうのも通常人の心理としては考えにくい。

 せっかく、「被虐待児童を救出して、かつ被害者の無い大儲け」という面白いプロットを使い乍ら、あまりに勿体無い。 コンピューター関連の描写が年を経る毎に古びていくのも、やはり勿体無い。 本作は発表当時の時代に消費される作品でしかなかった。 

パーフェクト・プラン (宝島社文庫)

パーフェクト・プラン (宝島社文庫)

  • 作者:柳原 慧
  • 発売日: 2005/01/15
  • メディア: 文庫