khurata’s blog

khurata’s blog

つめたいよるに (江國香織・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 平成元年に発表された9つの短編と、平成5年に発表された12の短編を収めた文庫本。 おそらく著者の初期作品集ということになるのであろうか。

 特に目を引くのは、小学生と老人が多く登場すること、そして小学生の心理描写がとても上手いことである。 そうそう、小学生位の子供ってこんな事考えたりしてたよ、平成元年の頃は、と強く思わされた。

 『夜の子どもたち』はホラーなのかギャグなのか、大いに笑ってしまうシーンがあるけれども、考えてみるとちょっと怖い話かも知れない。 『子供たちの晩餐』は、子供の持つ無邪気な、かつ酷薄な願望が上手く描き出されていて見事だ。 子供って残酷な事を「普通に」平気で、しかも楽しんでするし、それを大人になると忘れてしまうものだが、著者の感覚と記憶はそれをしっかりと掘り返して見せてくれる。 そうかと思えば『冬の日、防衛庁にて』では大人の女の気迫あふれる姿を見事に描いてもみせる。 そしてそれらの描写はどれも全て的確で簡潔だ。 仮に私が書いたら5倍以上の字数を要してしまうであろう。 必要最小限の描写で必要十分な表現をして見せる文章力は素晴らしいとしか言えない。 

つめたいよるに (新潮文庫)

つめたいよるに (新潮文庫)