khurata’s blog

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警視庁情報官ハニートラップ (濱嘉之・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 単行本『公安特命捜査 警視庁情報官Ⅱ』を改題・文庫化した作品だそうだが、この改題は果たして良かったのかどうか。 この改題のせいで、読者は主人公「黒田」の恋人「文子」を、最初から怪しいと思って読んでしまう。 まあ、改題が無くても読めば文子が怪しいことには違いないのだが……。

 黒田の、卓越した無駄のない捜査手法が実に鮮やか。 組織の存在意義とは、その力を使うことであり、上手い使い方をすれば良い仕事ができる、という黒田の仕事哲学は、普通の仕事でも充分に生かせるはず。

 これだけ濃い内容が、これだけの字数にコンパクトに収まっているのは黒田の有能さ、ひいては、それを描出し得る著者の筆力に依るもの。 著者の経歴を見れば成程とは思うが、この文章力は見事と言うほかない。 

警視庁情報官 ハニートラップ (講談社文庫)

警視庁情報官 ハニートラップ (講談社文庫)

 

 勝手に正誤表

文庫版 第1刷 P.137 誤 航海上 → 正 公海上

制服捜査 (佐々木譲・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 制服警官が刑事捜査に加わる事は無いので、タイトルからして何だろうとは思わせる。

 刑事ひと筋に多年を費した主人公「川久保」が、組織の致し方無い事情で、独り田舎町の駐在になり、そこでいくつかの事件を解決するキーパーソンとして活躍する物語の短編集。

 それぞれの短編は時系列順に配されており、読み進めるごとに田舎町の暗部が解き明かされてゆく。 元刑事としての矜恃、現状への憤懣、無能な刑事に対するやるせなさ等を感じながら、川久保は動いてゆく。

 最初の短編『逸脱』のラストはいくら何でもやり過ぎだろう川久保よ、と思うのだが、これは元々、単作として執筆されたという事情を斟酌すると、ラストについて厳しく評価するのも難しいかも知れない。 

制服捜査 (新潮文庫)

制服捜査 (新潮文庫)

 

 

悪の教典 (貴志祐介・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 『ジョジョ』の「吉良」、『MW』の「結城」のように、智に長け、他人を操る才に秀で、加えて「選択肢に制約を設けない」という行動指針によって、自らの求める自由や快楽を追い求める人物は、「選択肢に良識や法律で制約を設ける」普通人にとってダーク「ヒーロー」と言える。

 本作の主人公「ハスミン」もそうしたダークヒーローである。 彼は一種の精神障碍者であり、生まれた時から共感能力と感情に欠ける(この点だけは『コンビニ人間』の主人公と似ている)代わりに、並外れて優れた論理思考力と観察力を備えていた。 彼は自らに欠けている共感力を自覚し、自らの努力で演技として身に付けていくうちに、心理学や人心掌握術についての膨大な知識を得て、ますます「自由に生きる道」をエスカレートさせてゆく。 遂には自らの自由のために14歳で両親を完全犯罪で殺害するのだが、彼が人知れず殺害した「邪魔者」は他に数十人を下らないであろう。

 当初、ハスミンは特に何の変哲も無い人物として描かれる。 しかし、カラスを電殺した辺りから、おや、この男、おかしいぞ……と予感させられる。

 また、とても多くの人物が登場するにも関わらず、読みやすく書き分けられている筆力は見事である。

 内容的には胸糞悪くなる小説なのだが、「邪悪の表現」を追求する事は、作家・表現者としての正々堂々たる挑戦である。 我々がこれを受け容れられるか、られないか、その総意は、我々の国家が表現の自由を保障するかどうかにつながってゆく。 いかに悪趣味であろうと、いやさ、きわめて悪趣味だからこそ、この作品は読み継がれるべき作品なのだろう。 

悪の教典(上) (文春文庫)

悪の教典(上) (文春文庫)

 

 

悪の教典(下) (文春文庫)

悪の教典(下) (文春文庫)

 

 

YJカード(Yahoo!カード)突然の利用停止

 令和2年8月18日午前、Yahoo!カードから「カードご利用停止のお知らせ」なるメールが来た。 グーグル検索すると似た例はいくつかあり、文面はほぼ同じのようである。

(以下引用)

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カードご利用停止のお知らせ
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khurata 様

いつもYahoo! JAPANカードをご利用いただき誠にありがとうございます。
Yahoo! JAPANカードでは、Yahoo! JAPANカード会員規約(*)に基づき、カードのご入会後も定期・不定期の再審査を行っております。
このたび再審査を行った結果、カードのご利用を停止させていただきましたのでお知らせいたします。

※お客様に対して発行しておりますその他のカード(家族カードやETCカードの付帯カードを
含みます)につきましても、ご利用を停止させていただきましたので、あわせてご了承
くださいますようお願い申し上げます。
※審査基準等のお問い合わせにつきましては、回答いたしかねますので
あらかじめご了承ください。
※当該カードで公共料金・携帯電話料金等のご利用代金を継続的に決済されている場合は、
各サービス提供会社にてお支払い方法を変更してください。
※既に、当該カードのご利用は停止させていただいておりますので、お手元のカードは
お客様ご自身にてハサミで切ってご処分いただきますようお願い申し上げます。
※Tカード一体型クレジットカードをお持ちの方は、当該カードに記載されているTカード番号も
ご利用いただけなくなります。現在、たまっているTポイントは、翌月末をもって失効といたしますのでお早めにご利用ください。

(*)会員規約第21条に基づき、カードのご入会後も定期・不定期の再審査を行っています。

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Yahoo!カードのウェブページは一部の携帯電話からは見られません。
パソコン、スマートフォンからご確認ください。
本メールの配信について、ヤフー株式会社はワイジェイカード株式会社の業務を代行しています。
このメールは、システムより自動的に送信されて います。
このメールにご返信いただいても対応できませんのでご了承ください。
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Copyright (C) Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

(以上引用)
 利用停止となるような心当たりは無い。 毎月の引き落としを遅滞した事は無いし、利用明細を見ても不審な点は無いし、取引先にも不穏な所は無い。
 ウェブ記事によると、定期的な自動判定の「誤審」も有り得るので、何であれいったんは電話してみるべき、というものがあったので、ワイジェイカード株式会社のナビダイヤル(通話料が掛かる)に電話してみた。 3分ほど待たされてオペレーターにつながり、事情を説明して、再調査を依頼したところ、すぐさま「利用停止は間違いない」との由であった。
 利用停止の理由は内部的なものであろうし、そこをいくら突っついても仕方無いので、残りの支払いを一括にしてもらいたいとお願いしたところ、あっさりと応じてもらった。
 リボ払いにするとポイントがもらえるキャンペーンというのがあって、リボ払いに設定していたが、すでにポイントはもらっていたので、残りは一括でも構わない。 すでにウェブメニュー上では「リボお支払いコースの変更」も「リボ残高おまとめ払い」も使えなくなっていたので、これは助かった。 使えないカードのリボ払いの利息を払い続けるのは誠に馬鹿馬鹿しい。
 仕方無い事とは言え、Yahoo!プレミアムの支払いやネット回線料金、携帯電話料金の支払いにも使っていたので不便なことである。
 Tポイントについては家族が持っている別のTポイントカードにポイントを移せるようだが、そのために新しく Yahoo! の ID を取得しなければならないのが煩わしい。 今まで手数料で儲けさせてあげたのに(苦笑)、こういう煩雑な手続きを強いられるとは。

「全数PCR検査を進めたい理由」の先にあるもの

 令和2年7月26日付で、公立陶生病院の武藤義和医師によって、「第2波」と目される新型コロナウイルス感染症についての一般向け現状報告・解説記事が作られ公開された。

https://www.covid19-taskforce.jp/opened/coronanews0726/

 長い PDF であるが、学術的な内容を除いて私なりにまとめると、次のようになる。

「(令和元年末から令和2年春にかけての)『第1波』においては、『敵』の正体も生態も分からなかったために、場当たり的・総当たり的な対策しか取れなかったが、不幸な多数の事例からの知見が蓄積された結果、令和2年7月末現在においては、初期とは異なる対策が取れるようになってきている。 つまり、第1波の頃に言われていた『全数検査すべき』だとか『常にマスクを着用すべき』という話は、今ではそのまま通用するとは限らないし、過度に悲観的になる必要も無い。 『正しく恐れる』という行動が、今は出来るようになりつつある」

 また、この PDF において武藤医師は、「とにかく全員やるんだ」という PCR 検査にはほとんど意義が無いとして切り捨てている。 なぜそう言えるのかは PDF を見ても明らかだが、要約すると

「個人の不安を取り除く一時的な効果は有るかも知れないが、それで感染が100%分かるわけではなく、感染拡大を防げるわけでもなく、治療できるわけでもない。 だから、それに割ける費用と人員を、感染拡大防止や対症治療や治療法開発に充てるほうがはるかに良い」

という事であろう。

 医学的・疫学的にはそう言う事であるとして結着していると私は思うのだが、他にもうひとつ、全数 PCR 検査には多くの人が指摘しない別の問題点が潜んでいると私は思う。

 

 PCR 検査で提出する検体は、標的のウイルスだけでなく、個人の遺伝情報を全て含む。

 つまり、全数 PCR 検査の勧奨は、全国民と国内居住の全外国人に対して、「あなたの遺伝情報を全て提出せよ」と言うに等しいのである。

 指紋押捺を拒否するだのどうだのという話が一時世間を賑わせた事が有ったが、PCR 検査は指紋より高い精度で個人を特定できる。 指紋による個人識別において、別人の指紋が一致する確率は640億分の1とされる(※1)。 一方、現在一般的に使われる「15種の STR と性別判定用遺伝子」による DNA 鑑別は、検体採取と PCR 法実行に問題さえ無ければ「数兆人の中の1人を識別できる精度」(※2)を持つとされる。

 

 国民総背番号制マイナンバーに抵抗感を持っていたはずの我が国の国民が、そして国民が選び出した自治体の首長までもが、未知のウイルスに対する恐怖心からか、全数 PCR 検査をするべきだ、などと言い出している。 これはつまり、「恐怖心を煽る事さえ出来れば、国民総背番号制などたやすく導入できる」事を示していよう。

 

※1 財団法人インターネット協会第12回セキュリティフォーラム資料「指紋による認証システムの歴史と現状」(NECソフト株式会社・星野幸夫氏)より。

※2 医学書院「標準法医学」第7版第2刷より。 警察庁「約4兆7千億人に1人」の確率で個人識別が可能としている。