令和2年7月26日付で、公立陶生病院の武藤義和医師によって、「第2波」と目される新型コロナウイルス感染症についての一般向け現状報告・解説記事が作られ公開された。
https://www.covid19-taskforce.jp/opened/coronanews0726/
長い PDF であるが、学術的な内容を除いて私なりにまとめると、次のようになる。
「(令和元年末から令和2年春にかけての)『第1波』においては、『敵』の正体も生態も分からなかったために、場当たり的・総当たり的な対策しか取れなかったが、不幸な多数の事例からの知見が蓄積された結果、令和2年7月末現在においては、初期とは異なる対策が取れるようになってきている。 つまり、第1波の頃に言われていた『全数検査すべき』だとか『常にマスクを着用すべき』という話は、今ではそのまま通用するとは限らないし、過度に悲観的になる必要も無い。 『正しく恐れる』という行動が、今は出来るようになりつつある」
また、この PDF において武藤医師は、「とにかく全員やるんだ」という PCR 検査にはほとんど意義が無いとして切り捨てている。 なぜそう言えるのかは PDF を見ても明らかだが、要約すると
「個人の不安を取り除く一時的な効果は有るかも知れないが、それで感染が100%分かるわけではなく、感染拡大を防げるわけでもなく、治療できるわけでもない。 だから、それに割ける費用と人員を、感染拡大防止や対症治療や治療法開発に充てるほうがはるかに良い」
という事であろう。
医学的・疫学的にはそう言う事であるとして結着していると私は思うのだが、他にもうひとつ、全数 PCR 検査には多くの人が指摘しない別の問題点が潜んでいると私は思う。
PCR 検査で提出する検体は、標的のウイルスだけでなく、個人の遺伝情報を全て含む。
つまり、全数 PCR 検査の勧奨は、全国民と国内居住の全外国人に対して、「あなたの遺伝情報を全て提出せよ」と言うに等しいのである。
指紋押捺を拒否するだのどうだのという話が一時世間を賑わせた事が有ったが、PCR 検査は指紋より高い精度で個人を特定できる。 指紋による個人識別において、別人の指紋が一致する確率は640億分の1とされる(※1)。 一方、現在一般的に使われる「15種の STR と性別判定用遺伝子」による DNA 鑑別は、検体採取と PCR 法実行に問題さえ無ければ「数兆人の中の1人を識別できる精度」(※2)を持つとされる。
国民総背番号制やマイナンバーに抵抗感を持っていたはずの我が国の国民が、そして国民が選び出した自治体の首長までもが、未知のウイルスに対する恐怖心からか、全数 PCR 検査をするべきだ、などと言い出している。 これはつまり、「恐怖心を煽る事さえ出来れば、国民総背番号制などたやすく導入できる」事を示していよう。
※1 財団法人インターネット協会第12回セキュリティフォーラム資料「指紋による認証システムの歴史と現状」(NECソフト株式会社・星野幸夫氏)より。
※2 医学書院「標準法医学」第7版第2刷より。 警察庁は「約4兆7千億人に1人」の確率で個人識別が可能としている。