khurata’s blog

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神様のカルテ (夏川草介・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 地域診療を一手に担う総合病院で、数少ない内科医として日々奮闘する若き医師「一止(いちと)」と、周囲の人達、そして患者達の物語。 作中、二人の患者の死を看取るシーンがあるのだが、にも関わらず、読後感はほんのりと暖かい。

 院内の人物が皆本当に好人物で、邪悪な人間が一人もおらず、皆が互いを気遣って、過酷な医療の最前線で生きている。

 病院の外に在る人間関係もまた興趣深い。 まるで明治の文士か書生の如く友と交わる一止の姿は21世紀の現代においてなお爽やか。

 この主人公・一止は夏目漱石に心酔し、普段から古風な言葉遣いで周囲から変人扱いされているのだが、漫画『大正野郎』に通じるキャラクター造形で、こんな奴が一人くらいいたって良いじゃないか、と思わせる。 

神様のカルテ (小学館文庫)

神様のカルテ (小学館文庫)

  • 作者:夏川 草介
  • 発売日: 2011/06/07
  • メディア: 文庫