khurata’s blog

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夜のピクニック (恩田陸・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 朝8時から翌朝8時まで、途中休憩を挟みながらも全校生徒がひたすら歩き続けるという厳しい高校行事の中で、主人公を含む3年生達は級友と共に日没を見、星空を見、夜明けを見て、とにかく歩き続ける。 その局限された目的と疲労から逃げるように、彼らは自然と、普段話さないことを語り合う。

 リズムに刻まれた学校生活では何時間も顔を突き合わせて喋り続ける事は無いが、この行事は否応無くそれを可能にしてしまう。 その中で、彼らは恋の話をしたり、今まで知らなかったお互いの性格や秘密を知ったりするうちに、精神的成長を遂げてゆく。

 何人もの高校生達が、互いに複雑な関係を持っていて、たった24時間の中に、いくつもの青春ドラマが濃く詰め込まれている様は見事な筆力と言う他無い。 主人公達が羨ましくなる、爽やかな青春小説である。 

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

  • 作者:陸, 恩田
  • 発売日: 2006/09/07
  • メディア: 文庫