khurata’s blog

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ふたたび (矢城潤一・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 17歳のひきこもり男子主人公は、偶然に見掛けた若い女性を「ゴミ子」と名付けて観察するという小さな生きがいを見つけた。 しかしその時から主人公の家庭には転回点が訪れる。

 ゴミ子が転居してしまい観察が断絶するも、彼女が地域の図書館勤務だったためあっさり再会できた、という点はご都合主義的展開と言えなくもない。 だが、主人公の祖父が家庭に回帰したり、祖父が昔の仲間と再会を果たしたり、主人公の父が母と再会したり、ゴミ子が「もうひとつの恋」に出会ったりと、様々な「ふたたび」が重層的に描かれてゆくさまは見事。

 そうした渦中に在って、主人公は大人の世界を垣間見、小さからぬ成長を遂げる。 彼もまた、「ふたたび」世の中に、新しい自分を以て出てゆくことだろう。 

ふたたび swing me again (宝島社文庫)

ふたたび swing me again (宝島社文庫)

  • 作者:矢城 潤一
  • 発売日: 2010/07/06
  • メディア: 文庫