khurata’s blog

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ドアD (山田悠介・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 あくまで中高生向けの、読者に何も糧を残さない子供騙し作品。 著者の悪趣味描写だけが最後まで延々と続く。 そこには主張も意見も提言も無い。 漫画にたとえれば御茶漬海苔氏に似たテイストにも見えるが、この手の作品に初めて出会った少年少女にしか衝撃は与えられまい。

 登場人物達に何の思い入れも無いまま、彼らが無残に死んで・殺されてゆくのを、読者はただ傍観するのみ。 彼らキャラクター造形の浅さは、著者の知識と取材の不足を窺わせる。

 また、「仕掛け」がどう見ても人工的な物であり、不可思議な超常現象の類いでは無いのに、それに関する謎解きや説明が皆無である点もきわめて残念。 なぜ「12月6日」なのか、なぜ「彼ら」が選ばれたのか、それらについて記述が無いのは、単なる著者の「逃げ」と言われても仕方あるまい。

 私自身、くだらない物を長年描き続けてきたので、偉そうな事を言う資格は無いようなものだが、本作について言わせてもらうと、著者の趣味・力量云々はさておいても、これを商業出版物として世に問う事を是とした出版社・編集者の見識は疑わざるを得ない。 それによって、著者の名を益無く貶めるばかりであるからだ。

 しかし、こんな作品にも利点は在る。 それは、こんなひどい商品でも値付けされ商業出版されるのだという社会的事実を知り得た事である。 私はあえて、これを読むなとは言わない。 むしろ多くの人に最後まで読んで欲しいと強く思う。 「ドアD被害者の会」に入会してしまった気持ちを一人でも多くの方に味わっていただきたいからだ。

 最後に、もしもの話であるが……もしも、上記のような気持ちを味わわせ、考えさせる事が著者や編集者の目的であるならば、本作は超の付く成功作である、とは言っておこう。

ドアD (幻冬舎文庫)

ドアD (幻冬舎文庫)