khurata’s blog

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リピート (乾くるみ・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 本作の時代設定は、携帯電話が普及しておらず、ビデオデッキは普及していて、ノート型バソコンは持っている人は持っていて、液晶画面は角度により見づらい、という点から、おそらく1990年代なかばと思われる。 携帯電話が普及した時代では、もしかすると本作の話は難しいかも知れない。

 主人公が「リピート」を体験するまでの話も充分にミステリアスだが、「リピート」を無事果たしてからの後は、怒濤のサスペンスミステリーで、読み続けずにはいられない展開が続く。 不可解な連続殺人の謎は、ミステリー慣れした読者なら、作中人物の「天童」並みに途中で分かってしまうかも知れないが、それが分かってもなお、時間の流れに抗うにはあまりに無力な人間達の行動と結果は迫力を感じさせる。

 結局、リピーターとして生き続けてきた二人の人物が仕掛けたゲームは、その二人を含めて、関わった人全てを破滅に導いてしまう。 ゲームに参加させられた人達はもともと破滅する人達だったのだし、こうなるしかない結末なのだろうが、発案者の二人は、こんなゲームを思いつかなければ、思いついても実行さえしなければ、永遠に平穏無事でいられたはずだ。

 世界を変えるような行動は慎めと、新参のリピーター達にあれほど口酸っぱく注意した古参リピーターの二人が、それを破ったために受けた報いと言うこともできようか。

 二人は不老不死を手に入れたかも知れないが、同じ10ヶ月を延々と繰り返す人生には、いつか終わりが来るものなのだろう。 しかしそれがこんな終わり方だとは二人とも知る由も無かったことだろう。 全てはこの二人が蒔いた種であり、主人公達はそれに翻弄されたのだ。

 ただ、R11での二人は、また元の行動を起こし、それは彼らのR0となるのかも知れず(そこでは「毛利」の死に方は元とは異なるわけだが)、そうならば、この二人は永遠にこの10ヶ月に囚われる運命なのだ。

 なんだか海外のSF小説に似た話が有りそうにも思うが、私はそんなもの知らないので本作は充分に楽しめた。 

リピート (文春文庫)

リピート (文春文庫)