khurata’s blog

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血液型と性格は関連する?

(もともと「Yahoo!知恵袋」の「知恵ノート」だったものを転載しています)
(最終更新日時:2014/2/22)投稿日:2013/7/5

はじめに

 「人に血液型の話を振るのは日本人だけ」……などと言われるくらい、「血液型による性格判断」は日本独特のものと言われ、科学を知るほとんどの人が、この「性格判断」を否定します。
 本ノートでは、なぜ科学的に否定されるのか、そして、実は否定し切れない部分も無いではない……という点について、私なりの説明をしてみます。

 

血液型とは何か

 まずは、「血液型」とはそもそも何なのか、という事を知らなければなりません。 多くの方が、中学の理科の授業で、自分の血液型を調べた経験をお持ちと思いますが、ここでサッと「おさらい」してみましょう。

 血液型を、ひと言で言うと、「個々人の血液に含まれる物質の違いに着目した、血液の分類」です。

 ヒトのABO式血液型は、赤血球の表面に付いているタンパク質凝集原」と、血清の中に漂っているタンパク質「凝集素」に着目した分類です。

赤血球に「凝集原A」が有って「凝集原B」が無く、血清に「凝集素β」が有って「凝集素α」が無い血液を「A型」、

赤血球に「凝集原B」が有って「凝集原A」が無く、血清に「凝集素α」が有って「凝集素β」が無い血液を「B型」、

赤血球に「凝集原A」と「凝集原B」が有り、血清に凝集素が無い血液を「AB型」、

赤血球に凝集原が無く、血清に「凝集素α」と「凝集素β」が有る血液を「O型」、

……と、それぞれ区別して呼んでいます。 分類すると、次のようになります。

  A型 B型 AB型 O型
赤血球の凝集原A 有り 無し 有り 無し
赤血球の凝集原B 無し 有り 有り 無し
血清の凝集素α 無し 有り 無し 有り
血清の凝集素β 有り 無し 無し 有り

 凝集原Aと凝集素αが合わさると、凝固します。
 凝集原Bと凝集素βが合わさると、凝固します。

 天然に存在する上記4種類の血液型には、「凝集原Aと凝集素αを持ち合わせている型」や「凝集原Bと凝集素βを持ち合わせている型」がありません。 だから普通、血液は凝固しないのです。

 従って、A型とB型の血液を混ぜ合わせると、凝固してしまいます。 理科の授業では、このような「特定の凝集原と凝集素で凝固する性質」を利用して、血液型を調べていたのです。

O型の血液は、他の血液型の人に輸血しても大丈夫?

 O型血液をそのまま他血液型の人に輸血すると、凝集素αと凝集素βを供給する事になりますから、多少は凝固してしまいます。 ですが、O型血液の赤血球だけを分別して輸血すれば、凝固を防ぐ事が出来ます。
 現代の医療現場では、よほどの場合でない限り、同型の輸血しか行っていない(はず)のですが、どうしても同型の血液が確保出来ない場合は、O型の血球成分輸血が選択されるでしょう。 逆に考えれば、O型血漿(血球以外の成分…血清も含まれる)輸血が禁忌である事はお分かりでしょう。
 また、日赤の血液センターでは「合成血」という、「O型赤血球とAB型血漿を合わせた輸血用血液」を特別に受注製造する事があります。 これには凝集原も凝集素も含まれていませんから、誰に輸血しても凝固する心配はありません。
(参考 http://www.hyogo.bc.jrc.or.jp/blood/term.html

 

 ABO式以外の血液型

 ヒトの血液型は、ABO式の他にも、Rh式MNSs式Q式E式Auberger式血液型、Diego式血液型、Dombrock式血液型など、数十種類が知られています。 それぞれ、着目している物質が違うのです。

 我々は、何かを分類する時、いくつもの分類を同時に使う事がよくあります。 たとえば自動車なら、2ドアか4ドアか、普通車か軽か、ガソリン車かディーゼル車か、……などなど。 「このクルマは4ドアの普通車でガソリンエンジンだ」というように、1台のクルマについて、複数の分類を当てはめる事が、普通にあります。

 血液型も同様で、「この人の血液型は、ABO式のB型で、Rh式はプラスだ」というように、1人の血液について、複数の分類基準が当てはまります。

 

ABO式血液型と性格

 「現代の」科学的な立場から言うならば、ABO式血液型と性格の間に関連が有るとは言えません(「現代の」と但し書きをつけたのは、将来的に何が発見されるかは分からないからです)。

 なぜ関連があるとは言えないのか、それは、私が思うに次の4点によります。

(1)ABO式血液型は赤血球タイプと血清タイプの区分に過ぎない

 A型、B型、AB型、O型、という区分は、赤血球の表面に付いているタンパク質の違い、および血清(血液の液体成分の1つ)に含まれているタンパク質の違いによる区分です。 赤血球は、主に酸素を運搬するための血球ですし、それらタンパク質は血液の凝固に関わる物質です。 これらが、性格に関わるとは、(少なくとも私にとっては)考えにくい事です。

(2)ABO式血液型は4種類ではない

 ABO式血液型の表現型(=実際に発現している型)は4種類ですが、その遺伝型(=遺伝子の組み合わせ)には、AA、AO、BB、BO、AB、OO、の6種類があります。 遺伝型は遺伝子のタイプの違いであり、表現型は「遺伝子が発現した結果としての」赤血球と血清のタンパク質タイプの違いです。 ですので、性格について言うなら、表現型で分類するよりも、むしろ遺伝型により区分する方が「それっぽい」と私は思うのですが、なぜか血液型による性格判断は、性格・性向を4種類にしか分けません。

(3)血液型は不変ではない

 骨髄移植の治療を受けると、血液型が変わってしまうことがあります。 大変な治療ですので、その影響で物の考え方が変わったり性格が変わる事は有り得るでしょうけれども、それは治療のせいであって、血液型が変わったからではないと私は考えます。

(4)血液型はABO式だけではない

 前述の通り、血液型には、よく知られているABO式の他に、医学的に重要な血液型だけでも10種類以上あります。 それらの中からABO式だけを取り上げて性格に関連付けるというのは、ちょっと乱暴な話ではないかと私は思います。

 

本当に「関係ない」のか

 前章で、私は、「現代の」科学においてABO式血液型と性格の関連は、有るとは言えない……という主旨の事を書きました。

 しかし、もし、「遺伝により決まる性格・性向」というものが有るのなら、それは血液型(これも遺伝で決まる)と、何らかの関連が無いとは言い切れないものがあります。

 たとえば、寒冷地と温暖地それぞれに長く生存している人達は、環境圧(平たく言えば「環境から受ける影響」の事です)を受け、性格が違ってくる事が有り得るかも知れません。 「突然変異は誰にも同じような確率で発生し、環境圧に、より適応出来た変異遺伝子だけが生存し続ける」のであれば、「寒冷地の人達は辛抱強く、温暖地の人達は陽気である」、といった性格の違いが遺伝子レベルで出来ていく事も、有り得るかも知れません(そうした性格の違いは遺伝子に依るのではなく、その地域独特の文化や教育の結果かも知れませんが)。
 血液型は遺伝で決まりますから、上記のような「遺伝的性格」(というものが有るとすれば)を血液型と帯同して受け継ぐ、という事も、考えられなくはありません。

 実際、血液型の分布は、地域差が認められます。 「その地域に適した遺伝型が有る」のは当然でしょうから、地域毎に適した血液型というものも有り得る、とは言えるのです。 これらの仮定の積み重ねが真実ならば、つまり「血液型と性格は、帯同・関連する遺伝型に由来する」ならば、血液型と性格には関連が有る、と言えるでしょう。

鎌状赤血球
 マラリアが多発するアフリカの地域では、他地域ではほとんど見られない、鎌状赤血球を持つ人達がいます。  鎌状赤血球は脾臓で壊されてしまうので、鎌状赤血球に寄生したマラリア原虫も共に破壊されてしまいます。  つまり鎌状赤血球は、異常な赤血球ですが、マラリアへの耐性があるのです。
 鎌状赤血球を持つかどうかは遺伝により決まります。 これは、「地域により遺伝の型が異なり、血液の型も異なる」という1つの例です。

 また、別の話として、「血液型と性格に強い相関がある」とする文化の中で育った人は、それに感化されて、実際そのような性格に育つ……という事も、充分考え得る話です。 もっとも、これは文化や心理学の話であって、血液型特有の話とは言えません(この話は、「血液型」を「身長」など他の物事に置き換えても成立してしまう)。

 

おわりに

 結局のところ、「現在」の時点では、血液型と性格の相関は証明されておらず、かと言って、「科学的に完全に否定され切った」とも言えません。 今のところは、「真相はまだ分からないが、おそらく相関は無い」が、最も正確な回答だと私は考えています。

 

参考サイト・文献

福井大学医学部・輸血Q&A http://www.med.u-fukui.ac.jp/BLO/QA/QA-1.html
大阪府赤十字血液センター http://wanonaka.jp/first/bloodtype.html
兵庫県赤十字血液センター http://www.hyogo.bc.jrc.or.jp/blood/term.html
(転載以上)