khurata’s blog

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「アプリ」と「ソフト」、何が違う?

(もともと「Yahoo!知恵袋」の「知恵ノート」だったものを転載しています)
(最終更新日時:2016/4/1)投稿日:2015/9/14

はじめに

 スマートフォンが普及した現在、「アプリ」という言葉は日常的に使われています。 また一方では、「ソフト」という言葉も、よく使われます。 この両者は、何がどう違うのでしょうか。
 また、「ソフト」と「コンテンツ」の違いは?

 本ノートでは、これらの言葉について、しつこく説明していきます。

 

ソフトは何が「柔らかい」?―「ソフトウェア」の語源―

 昔は、単に「ソフト」と言えば、「ソフトクリーム」の略とか、「(人物の)物腰が柔らかい」とか、そんな使われ方をされていました。

 ところが現在、単に「ソフト」と言えば、「ソフトウェア」(software)の略語であることが多いです。

 ソフトウェアというのは「ハードウェア」(hardware)の対語です。 「ハードウェア」という英語は、昔からありました。 1963年に発行された「新ポケット英和辞典 第3版」(研究社)には、

1 金物類、銃器類
例 a hardware house [store] 金物店
2 [俗] 火器、鉄砲

と掲載されています。 しかし、この辞典に software という言葉は載っていません。 つまり、「ソフトウェア」は、「ハードウェア」の対語ではあるのですが、新しい言葉なのです。

 コンピュータが発明されたのは、1940年代なかばのことです。 コンピュータそのものは「固い機械」ですから、これはハードウェアです。

 ところが、それまでに使われていた他の機械、たとえば自動車やボイラーやタイプライターなどと違って、コンピュータは、プログラムやデータが無ければ、目的に沿った動作が出来ない機械です。

 現在、単に「プログラム」(program)と言えば、「コンピュータ・プログラム」(computer program)を縮めて言っている事が多いのですが、program は、本来は「演目」とか「予定表」という意味です。 「コンサートのプログラム」とか「運動会のプログラム」などのように使います。
 コンピュータ・プログラムとは、コンピュータに実行させたい手順を書き表した文書のことです。 多くの場合、「運動会のプログラム」ほど単純ではありませんが、「プログラムに書かれた順番に従って物事が進む」という点では似ています。

 そこで、プログラムやデータのようなものを、「ソフトウェア」と呼ぼう、という発案がされました。 コンピュータは、「ハードウェア」と「ソフトウェア」が揃って、はじめて使い物になる機械である、と。

 誰が、いつ、software という言葉をそのような意味で言い出したかは諸説ありますが、1950年代には、いくつかの論文で使われているようです。

 つまり、「ソフトウェア」とは、コンピュータの動作に必要なプログラムやデータを総称する言葉であり、「ハードウェア」と違って、「固い機械・物体」ではなく、決まった形を持たないもの、という事になります。

 なお、1984年に発行された「ライトハウス英和辞典 初版」(研究社)には、software が収録されています。 この頃には、すでに「ソフトウェア」という言葉が社会的に定着しつつあったのでしょう。

 また、「ソフトウェア」を「ソフト」と縮めて言うのと同様、「ハードウェア」を「ハード」とも呼ぶようにもなりました。 「ゲームハード」(ゲーム用コンピュータ)とか「ハード環境」のように使われます。

 

プログラムじゃなくても「ソフト」?

 プログラムやデータは、それ自体に決まった形がありません。 ですから、「このプログラムの長さは1メートルくらいある」とか、「このデータの重さは500グラムである」とかは、言えないわけです。

 しかし、我々人間がプログラムやデータを持ち運んだりする際には、なんらかの形が必要です。 たとえば、画像データを持ち歩くためには「USBメモリ」を使ったりしますが、USBメモリには、ちゃんとした形があります。

 USBメモリをコンピュータに差すと、USBメモリの中の画像が鑑賞できる……という「スタイル」は、他の機械(ハードウェア)にもあてはまります。

 CD を CDプレイヤーにセットすると、CD の中の音楽が鑑賞できますし、DVD を DVDプレーヤーにセットすると、DVD の中の映像が鑑賞できます。 CDプレイヤーや DVDプレイヤーは、もちろん、れっきとしたハードウェアです。

 ハードウェアに媒体(メディア)をセットすると、その収録内容を鑑賞できる……このような「使うスタイル」の類似性から、CD や DVD などの媒体も、「ソフト」と呼ばれるようになりました。

 こうしたものを「ソフト」を呼ぶのは、「ソフトウェア」の本来の用法からは外れてしまっているのですが、コンピュータに詳しくない人から見れば、

「コンピュータに USBメモリを差すのと、DVDプレーヤーに DVD をセットするのと、何が違うんだ」

と感じられるでしょう。 また、多くの場合、そのように扱っても、特に問題がありません。

 特に現代では、音楽も映像もデジタル・データである事が多く、デジタル・データはコンピュータで扱えるデータであるため、「ソフト」と呼ぶ事に抵抗が少なくなってきたのだと筆者には思われます。

 ちなみに、このような「ソフト」の使われ方は、筆者の記憶では1980年代頃から始まりました。 その頃に、「VHSソフト」とか、「ゲームソフト」という言葉が使われ始めたと思います。
(VHS テープはアナログ記録であるため、コンピュータのソフトウェアとしてそのまま扱うことは出来ませんが、それでも「ソフト」と呼ばれていました)

 現在、「ゲームソフト」、「音楽ソフト」、「映像ソフト」、という言い方は一般化しています(※1)。

 

「アプリ」はプログラム

 コンピュータ・プログラムは、その目的や使われ方によって、いくつかに分類できます。 たとえばデバイスドライバは「システム・プログラム」、ワープロやウェブブラウザは「アプリケーション・プログラム」と呼ばれます(※2)。

 「アプリ」とは、「アプリケーション・プログラム」(application program)を縮めて言う言葉です(※3)。

 application は「適用」という意味であり、「アプリケーション・プログラム」は、「適用業務プログラム」と訳されます。

 つまり、何らかの特定の業務を実行する目的で作られ使われるプログラムが、アプリケーション・プログラムなのです。

 ワープロは「文書作成」、ウェブブラウザは「ウェブサイトの閲覧」、動画プレーヤーは「映像の閲覧」、ゲームは「遊び」、というように、それぞれ、何らかの「特定の業務」を実行するために、作られ、使われています。 従って、これらは全て「アプリケーション・プログラム」、すなわち「アプリ」です。
(ゲームで文書作成をしよう、と考える事は無いでしょう)

 スマートフォンは、このような「様々なアプリ」をインストール(導入)する事によって、「様々な業務」を実行することが出来ます。

 対して、デバイスドライバーや OS は、特定の業務にこだわってはいません。 プリンターのデバイスドライバーは、プリンターを動作させるために必要ですが、「プリンターを使う・動作させる」という目的でプリンターを使うことは、通常ありません。
(プリンターを設計・製造したり点検したり修理したりする人達は、そういう業務目的を持っていますが、「普通の人」は、そうではありません)

 プリンターを使う目的とは、「文書を印刷する」とか「オリジナル DVD のラベルを作成する」であって、「プリンターを動かす」ことは目的でも業務でもないわけです。 ですから、デバイスドライバーはプログラムではありますが「アプリ」ではありません。

 OS も、同様の意味で「プログラムだがアプリではない」のです。 OS はコンピュータを使うために必要ですが、コンピュータを使って何をするか(=目的・業務)は OS によって限定されないからです。

 なお、「アプリ」はプログラムですから、「ゲームアプリ」はゲームプログラムの事であり、「音楽アプリ」とか「映像アプリ」と言えば、音楽や映像を扱うプログラムの事になります(※4)。

 この点、「ソフト」と微妙に異なるのが厄介なところで、「映像ソフト」と言えば映像そのものを指すのに対し、「映像アプリ」は映像そのものを指し示しません。 対して、「ゲームアプリ」と「ゲームソフト」は、ほぼ同義語です。 音楽や映像と違い、コンピュータ・ゲームは、それ自体がプログラムなので、「ソフト」でもあり「アプリ」でもあるのです。

 

「コンテンツ」はソフト?アプリ?

 「コンテンツ」(contents)とは、「中身、内容物」という意味です。

 「スマホのアプリ」は、スマートフォンに「入れて」(インストール)使うので、「スマホのコンテンツ」と言えます。 つまりスマホのゲームアプリは、「スマホにおけるゲームコンテンツ」です。

 「ゲーム機で遊ぶゲームソフト」も、そのゲーム機におけるコンテンツです。 ですから、「PS3Xbox360 は異なるコンテンツ(のラインナップ)を持つ」、と言えます。

 また、音楽や映像は、CD や DVD というメディア(媒体)に「収録されているもの」、また YouTube の内容にもなる、という意味で、これらも「コンテンツ」と呼ばれます。

 現在、「コンテンツ」という言葉の意味や使われ方は、大変広くなっていて、たとえばテレビ番組も、「テレビのコンテンツ」と言われていますし、「コンサートのコンテンツ」と言えば、その曲目のことです(※5)。
 また、Amazon楽天などの通販店舗の品揃えも「コンテンツ」と呼ばれます。 さらには、インターネットで閲覧出来る文書や画像、動画を総称して「ウェブ・コンテンツ」と呼ぶこともあります。

 つまり、「コンテンツ」とは、「何らかの内容」として扱われる「アプリ」や「ソフト」を、広くまとめて呼ぶことが出来る言葉だと言えます。

 ただし、学校の教科、たとえば「算数」が、「小学校のコンテンツ」と呼ばれることは無いようです。 また、実際に形有るものについても、「コンテンツ」と呼ばれることは少ないようです。 たとえば「絵画は画廊のコンテンツ」であるとか、「校庭は学校のコンテンツ」であるとか、「コンビニのコンテンツ」、「デパートのコンテンツ」、などと言われることはあまりありません。
 Amazon楽天の品揃えは、実際に物品を並べて置いてあるわけではなく、その「品揃え」はあくまで情報に過ぎない、という点で、上記とは異なっています(これらは、YouTube における映像などとともに、「ウェブ・コンテンツ」に含まれる)。

 筆者の感覚からすると、どうやら、「コンテンツ」は、「娯楽ないし実用に使われる情報・データ」に限られているように思われます。

 

まとめ

 以上についてまとめると、次のようになります。

◆ソフト
ソフトウェアの略。 基本的にはコンピュータ・プログラムとデータの事だが、ハードウェアによって抽出・鑑賞されるコンテンツ(音楽、映像など)をも指す。

◆ソフトウェア
ハードウェアの対語で、コンピュータ・プログラムとデータを指す。

◆ハード
ハードウェアの略。

◆ハードウェア
「金物」の意味で、コンピュータなどの機械の物理的本体を指す。

◆アプリ
アプリケーション・プログラムの略。 コンピュータ・プログラムのうち、特定の目的のために作られ使われるものを指す。

◆コンテンツ
「内容物」の意味だが、現在はソフトやアプリを包括して指すことが多い。

 

おわりに

 以上、駆け足な説明でしたが、多少なりとも納得していただける点がありましたら幸甚です。

 

脚注

 

※1
 現在の我が国においては、「ソフト」と「ソフトウェア」は、異なる言葉として使われることが多い。 たとえば「映像ソフト」と「映像ソフトウェア」は意味が異なる。 大抵の場合、前者は映像そのものであるが、後者は映像を扱うプログラムを指す。
 ただし「ゲームソフト」と「ゲームソフトウェア」とか、「会計ソフト」と「会計ソフトウェア」は、どちらも同じ意味である。 これらはいずれもプログラムである。 つまり、対象がプログラムであるか、そうでないかによって、「ソフト」は意味・使われ方が違う。 ただ、海外や英語圏でも「ソフト」がそのような意味・使われ方であるのか、筆者は不勉強にして知らない。

※2
 「システム・プログラム」は「システム・ソフトウェア」と言い換えてもよく、「アプリケーション・プログラム」を「アプリケーション・ソフトウェア」と言い換えてもよい。
 しかし、なぜか OS は「基本ソフトウェア」とは呼ばれても「基本プログラム」と呼ばれることはほとんどない。 おそらく慣習的なものであろうが、なぜそうなのかは筆者には分からない。

※3
 前注により、「アプリ」は「アプリケーション・ソフトウェア」を縮めた言葉である、と言っても正しい。

※4
 対象がプログラムであるか、そうでないかにより使われ方が異なるという点で、※1とも通ずる話である。
 「ゲームアプリ」「ゲームソフトウェア」「ゲームソフト」は全て同じ意味であり、「会計アプリ」「会計ソフトウェア」「会計ソフト」も全て同じ意味である。 これらは全てコンピュータ・プログラムを指すからだ。
 しかし「映像アプリ」と「映像ソフトウェア」は、「映像ソフト」とは違う意味である。 前2者はコンピュータ・プログラムだが、後者はそうではなく、映像を媒体に収録したものを指す。

※5
 つまり「コンサートのプログラム」に書かれているのは、そのコンサートのコンテンツである。 しかし「コンサートのプログラム」はコンピュータ・プログラムではないし、音楽そのものでもないため、「コンサートのソフト」とは呼ばれない。

(転載以上)