khurata’s blog

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きみのためにできること (村山由佳・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 自分を棚に上げる事にもなるが、本作を読んでいると、つくづく男というものはずるい生き物だな、と思わされる。

 それはそれとして、本作は歯がゆいばかりの若い恋の物語だ。 舞台は20世紀末の日本、「パソ通」でメールボックスサービスを介して連絡し合う主人公「俊太郎」と、恋人の「日奈子」が、ほのぼのとしたやりとりをしている所から物語は始まる。

 「業界」の仕事人間としてどうしても日奈子とすれ違いが多くなる俊太郎は、日奈子の淋しさに気付けない。 それがために、2人の間には遂にのっぴきならないほどにヒビが入ってしまうのだが、最後は「きみのためにできること」にやっと気付いた俊太郎が、日奈子の気持ちを汲むために走る。

 俊太郎がそこに気付くまで、日奈子はメール文面でしか現れない、という演出もなかなか効いている。 

きみのためにできること(集英社文庫)

きみのためにできること(集英社文庫)

  • 作者:村山 由佳
  • 発売日: 1998/09/18
  • メディア: 文庫
 

 

阪急電車 (有川浩・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 あっという間に読み終わってしまうのが勿体無さ過ぎる面白さ。 時には楽しく笑わせ、時には微笑ませ、時には痛快で、時には勇気を与えてくれる。 人生の、小さな事かも知れないが大切な事を教えてくれる小説。

 個人的には「茹でダコ」ゴンちゃんこと「美帆」の純朴な喋りや仕草がいちいち面白くて笑ってしまった。 こんな漫画みたいな人物がいるわけ無いだろう、と言う向きも有ろうが、私は許容範囲だ。 女子高生「悦子」の喋りもなかなかの切れ味。 「時江」の凜とした振る舞いも涼やかで気持ち良い。

 ほぼ半分まで読み終えた時の作品の仕掛けも面白い。 前半と後半の、微妙な空気感の切り替えも見事。 前半は楽しく面白く読者を引きずり込み、後半はそれを回収して、少しほろ苦くも後味の良い作りで終わってゆく。

 登場人物は圧倒的に女性が多いのだが、彼女達の幸せを願わずにはいられない。 「じゃあ、ショウコもがんばる!」と涙目で言ったカッコいい少女も印象深い。

 それにしても著者は野草と、「料る」という言い回しが好きだなぁ、とつくづく思う。 

阪急電車 (幻冬舎文庫)

阪急電車 (幻冬舎文庫)

  • 作者:有川 浩
  • 発売日: 2010/08/05
  • メディア: 文庫
 

 

HTAランチャーを作る

 Windows 10 はアップデートの度に完成度が高まってきている感じがするし、それはそれで良いのだが、旧機能を切り捨てていく事も度々有る。 それは多くのユーザーがほとんど使っていないからそうなるのだろうが、自分が使っていた場合にはつらい。

 自分の場合、HTA でデスクトップアプリケーションもどきを簡単に作れるのが重宝していたが、いつの間にか拡張子 .hta をダブルクリックで実行できなくなっていた

 System32 にある mshta.exe に HTA ファイルを DnD すれば実行できるのだが、mshta.exe のショートカットを作ったにしても DnD は煩わしい。 また、どういうわけか、拡張子 .hta を mshta.exe で実行するよう関連付けする事も出来なくされている。

 なんとかして HTA をダブルクリックで実行したい……ならば mshta.exe のランチャーを作れば良いはずと思い立ち、簡単な C プログラムを作った。

HTA Launcher for Windows 10

  これを gcc などでコンパイルし適当な名前で .exe を作る。 適当な HTA ファイルを右クリックし「プログラムから開く」、「別のプログラムを選択」、「常にこのアプリを使って~を開く」にチェック、「その他のアプリ」、「この PC で別のアプリを探す」。 これでファイルオープンダイアログが起動するので、先ほど作った .exe を選択し「開く」。

 これで、晴れて HTA がダブルクリックで実行できるようになった。 結果的には目出度し目出度しだが、バッドノウハウではある。

あなた (乃南アサ・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 タイトルだけ見ると恋愛小説のようだが、全体を通して見るとやはり恋愛小説であった。 ラストがああいう落ちになるのは読んでいてあまり納得し難い所も有り、他に落とし所は無かったのかとも思う。

 主人公「秀明」と、共に同じ予備校で2浪している少女「美作麻衣」が秀明に好感を抱いているのは2人の最初の描写から明らかなのだが、それがまさか「そういう事」になるとは思わなかった。

 ラストと共にもう1つ残念なのは、秀明達を苦しめるものの正体が明かされた後の話の流れが、いかにも安っぽい仕立てになってしまった事だ。 やや残念な落ちは、この転回点以降には他にどうしようも無かったのかも知れない。 

あなた(上)(新潮文庫)

あなた(上)(新潮文庫)

 

 

パーフェクト・プラン (柳原慧・著)

<この記事は普段フィクションをほとんど読まない私が作者や作品などの情報・評判を全く知らずに、ただ作品だけを読んで好き勝手に書く読書感想です>

 2004年の発表当時は激賞されていたそうだが、残念乍ら時の試練に耐える作品ではなく、2020年現在に読んでみると、いかにも古臭く感じる。 登場人物達の造形も浅く、「俊成」の驚くべき特殊な才能が話の筋に何ら活かされるわけでもなく、「ヨシュア」の腕前とやる事のギャップはなぜか大きい(なぜ原発や軍事施設や国家機関のクラックをしなかったのか、映画『ウォー・ゲーム』に心酔しているというのに)。

 また、若き女性刑事「馨」の勝手な単独行動や、犯行解明や捜査現場において馨のコンピューター技術に周囲の先輩刑事や上司が唯々諾々と流されるシーン、逮捕後に護送されている人物に携帯電話を使わせる刑事など、刑事の行動として有り得ない描写が目立ってしまい、物語に没入しづらい。

 我が子を連れ去られた「俊英」が犯人のメールを信じて易々と従ってしまうのも通常人の心理としては考えにくい。

 せっかく、「被虐待児童を救出して、かつ被害者の無い大儲け」という面白いプロットを使い乍ら、あまりに勿体無い。 コンピューター関連の描写が年を経る毎に古びていくのも、やはり勿体無い。 本作は発表当時の時代に消費される作品でしかなかった。 

パーフェクト・プラン (宝島社文庫)

パーフェクト・プラン (宝島社文庫)

  • 作者:柳原 慧
  • 発売日: 2005/01/15
  • メディア: 文庫